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伊吹命プロローグSS」(2014/04/16 (水) 21:21:19) の最新版変更点

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*伊吹命プロローグSS 「なぁ、購買いこうぜ!」 「おう、今日はどんな武器売ってるんだろうな」 お昼時、そんなクラスの男子の会話が聞こえる。 リニューアルした購買で売り出され始めた武器の話題で最近は持ち切りだ。 武器。 武器と言われてまず何を思い浮かべるだろうか。 剣や槍、銃や手榴弾、果ては鎖鎌や鉄甲などその種類は多岐にわたるだろう。 その主な用途といえば、戦闘である。 例え護身という目的であったとしても相手を傷つける可能性のある道具であることは間違いない。 そう、武器は人を傷つけるのだ。 相手を傷つけることを恐れている人間にとって、武器は恐怖の対象となる。 例えば私の友人、辻友江の様に。 「まったく、武器武器ってなんで男子ってああやってはしゃぐのかしら」 「……」 「……友江?」 「ううん、何でもないよ。」 辻友江。 お下げ髪に大きく丸い瞳。 真面目で清楚なイメージを受ける彼女は印象通りの性格で、とても優しい女の子だ。 争いなんて苦手で、怖くて仕方ないといった性分である。 臆病と人は評するかもしれないが、私はそんな優しい彼女の性格を好ましく思っている。 軽度の傷を瞬時に癒やすことができる彼女の魔人能力「癒しの息吹」はまさに彼女らしいと言えよう。 そんな彼女が武器という言葉に友江がビクリと肩を震わせたのが傍目に見て分かった。 今のは失言だったか。 大げさな反応かと思うかもしれないが、つい最近、バーゲンで売っていた武器を使用した傷害事件も起きたのだ。過敏になるのも分かる。 「今日は購買いかないで学食にしようか」 「うん……」 その時、友江の綺麗な瞳は悲しそうに揺れていた。 ◇◇◇ ――――それから事態は急速に進んでいく。 武器は生徒間で普及し、風紀は乱れ、学校が荒れていく。 そして、山乃端一人が殺された。 平和だった希望崎に戦争が訪れる。 武器を使って人が傷つけあってしまう。 そんな状況を何よりも悲しんだのは友江だった。 「どうしてッ……! なんで生徒同士で殺しあわなきゃいけないの!」 彼女の悲痛な叫びが何よりも彼女の心情を表わしていた。 大した慰めもできないまま、時だけが過ぎていく。 そして、更に彼女を追い詰める事態が起きる 「2-A、出席番号28番辻友江。(生徒会/番長)陣営に参加願いたい。」 「……!」 番長陣営の使いがやってきた。 怯えた表情の友江を庇い、私は前に出る。 「なんで友江がハルマゲドンに参加しなきゃならないの? 友江は戦闘能力なんて持ってないし、人を傷つけることを嫌う女の子なのよ。そんな子を戦場に送り出すなんて……!」 「その女の能力、「癒しの息吹」は消耗戦で非常に役立つ。是非味方に引き入れたいのだ」 「そんなこと、私がさせない。戦力が欲しいなら私を引き入れなさいよ。友江の様に回復させることはできないけど、私の能力『命の息吹』は武器を人間にして戦わせることだってできる。決して悪い話じゃないと思うけど。」 「…………」 「…………」 数瞬の睨み合いの後、使いが口を開く。 「いいだろう。伊吹命、お前を辻友江の代わりに番長陣営に引き入れる。覚悟はいいか」 「上等、望むところよ」 「み、命……いいの?」 心配そうに友江が手を握ってくる。 本当はとてつもなく怖いけど、友江の為なら……。 「大丈夫よ、大丈夫。」 自分に言い聞かせるようにそう言って、友江の手を強く握り返す。それは友江を安心させるためか、自分を安心させるためか。わからない、わからないけれど一つここに誓いを立てよう。 「絶対に生き残る。生きて帰って、また友江との平和な日常に戻るよ」 【END】
*伊吹命プロローグSS 「なぁ、購買いこうぜ!」 「おう、今日はどんな武器売ってるんだろうな」 お昼時、そんなクラスの男子の会話が聞こえる。 リニューアルした購買で売り出され始めた武器の話題で最近は持ち切りだ。 武器。 武器と言われてまず何を思い浮かべるだろうか。 剣や槍、銃や手榴弾、果ては鎖鎌や鉄甲などその種類は多岐にわたるだろう。 その主な用途といえば、戦闘である。 例え護身という目的であったとしても相手を傷つける可能性のある道具であることは間違いない。 そう、武器は人を傷つけるのだ。 相手を傷つけることを恐れている人間にとって、武器は恐怖の対象となる。 例えば私の友人、辻友江の様に。 「まったく、武器武器ってなんで男子ってああやってはしゃぐのかしら」 「……」 「……友江?」 「ううん、何でもないよ。」 辻友江。 お下げ髪に大きく丸い瞳。 真面目で清楚なイメージを受ける彼女は印象通りの性格で、とても優しい女の子だ。 争いなんて苦手で、怖くて仕方ないといった性分である。 臆病と人は評するかもしれないが、私はそんな優しい彼女の性格を好ましく思っている。 軽度の傷を瞬時に癒やすことができる彼女の魔人能力「癒しの息吹」はまさに彼女らしいと言えよう。 そんな彼女が武器という言葉に友江がビクリと肩を震わせたのが傍目に見て分かった。 今のは失言だったか。 大げさな反応かと思うかもしれないが、つい最近、バーゲンで売っていた武器を使用した傷害事件も起きたのだ。過敏になるのも分かる。 「今日は購買いかないで学食にしようか」 「うん……」 その時、友江の綺麗な瞳は悲しそうに揺れていた。 ◇◇◇ ――――それから事態は急速に進んでいく。 武器は生徒間で普及し、風紀は乱れ、学校が荒れていく。 そして、山乃端一人が殺された。 平和だった希望崎に戦争が訪れる。 武器を使って人が傷つけあってしまう。 そんな状況を何よりも悲しんだのは友江だった。 「どうしてッ……! なんで生徒同士で殺しあわなきゃいけないの!」 彼女の悲痛な叫びが何よりも彼女の心情を表わしていた。 大した慰めもできないまま、時だけが過ぎていく。 そして、更に彼女を追い詰める事態が起きる 「2-A、出席番号28番辻友江。番長陣営に参加願いたい。」 「……!」 番長陣営の使いがやってきた。 怯えた表情の友江を庇い、私は前に出る。 「なんで友江がハルマゲドンに参加しなきゃならないの? 友江は戦闘能力なんて持ってないし、人を傷つけることを嫌う女の子なのよ。そんな子を戦場に送り出すなんて……!」 「その女の能力、「癒しの息吹」は消耗戦で非常に役立つ。是非味方に引き入れたいのだ」 「そんなこと、私がさせない。戦力が欲しいなら私を引き入れなさいよ。友江の様に回復させることはできないけど、私の能力『命の息吹』は武器を人間にして戦わせることだってできる。決して悪い話じゃないと思うけど。」 「…………」 「…………」 数瞬の睨み合いの後、使いが口を開く。 「いいだろう。伊吹命、お前を辻友江の代わりに番長陣営に引き入れる。覚悟はいいか」 「上等、望むところよ」 「み、命……いいの?」 心配そうに友江が手を握ってくる。 本当はとてつもなく怖いけど、友江の為なら……。 「大丈夫よ、大丈夫。」 自分に言い聞かせるようにそう言って、友江の手を強く握り返す。それは友江を安心させるためか、自分を安心させるためか。わからない、わからないけれど一つここに誓いを立てよう。 「絶対に生き残る。生きて帰って、また友江との平和な日常に戻るよ」 【END】

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