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*■無慈悲な掟の執行者■ 結局、『懲罰の鞭』は展示されていただけで、バーゲンの商品として提供されることはなかった。 菱橋調子はがっくりと肩を落とし、家路につく。 (しかたない、今度の土曜日にイオンに行って新しい鞭を買ってこよう。懲罰の鞭、欲しかったなぁ……) とぼとぼと河川敷を歩く菱橋を、誰かが呼び止めた。 「やっほー☆ 菱橋さんこんにちわーっ! ……あれ、元気なさそうだね?」 巨大な蟹めいたサイバネ☆クロー。同じ番長グループの、二〇禾予だ。 「ああ。目当ての鞭が出品されなくてね。がっかりだよ」 「そっかぁ。得意の武器がないと困るもんね。ならば……死ねェーッ!」 突然、クローで襲いかかる! 「なっ!?」 菱橋は猛獣との触れ合いで磨いた反射神経で咄嗟にスウェー回避! クローが胸元を掠めて服を引き裂く! 「いきなり何をする!?」 「ククク……弱ったものを糧にするのはサバンナの掟。てめェの命は私の経験値にさせてもらう。悪く思うなよォ……」 なんで甲殻類がサバンナを例えに使ってるのかは不明だが、言ってることはもっともだ! 「ふぅ……、困った子ね。ここは、サバンナじゃないのよ」 菱橋はズボンのベルトを外し、二つに折って両手で持った。 「止まれっ!」 ビシィッ! ベルトをたわませてから一気に引いて打ち合わせ、鋭い音を立てる! 「ひっ……」 蟹の少女は鞭に対する根源的恐怖を呼び起こされて硬直した。 「サーカスではサーカスの掟に従ってもらう! 調教師には絶対服従! わかったか!」 バシィッ! さらに鞭打ち音! 「ハイ! わかりました!」 元気に答える蟹ちゃん! 良い子! 「よーし、ではこいつに火をつけてくれ」 菱橋は鞄から何かを取り出して組み立てた。 「ハイ! ……アッ、これは!」 蟹ちゃんがクローの火遁放射で着火すると、見事な火の輪が完成した。 「よし、輪をくぐれ!」 「むっ、無理です。怖いです!」 「くぐるんだ!」 バシィッ! 鞭打ち音! 「ひゃあああっ!」 火の輪よりも鞭のが怖いっ! 蟹ちゃんは必死で火の輪をくぐった! 「あっ! やったー! できました!」 「よしよし、偉いぞ。今度の土曜にイオンで生魚を買ってきてあげよう」 「やったー!」 ■無慈悲な掟の執行者■ おわり

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