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■たたかえ蟹ちゃんシリーズ■第10話☆五年ぶりの食事■


波の音が、聞こえる。簡素な寝具、薄い掛け布団。だが室温は低くなく快適だ。窓の外の日差しが強い。……ここは、どこだろう。思い出せない。自分が誰なのかすら。なぜ私の両腕は、こんなに巨大なサイバネなのだろうか。ギシッ。ギシッ。うん、動く。とても強そうだ。1

「気付いたのね、良かった。まるで魚雷を何発もぶつけられたみたいな酷いケガだったんだよ」白いワンピースの女性が、機械音を聞きつけてやってきた。健康的に日焼けした肌とすらりと伸びた手足。そして、大きな胸。彼女が、私を助けてくれたのだろうか。2

グゥー、キュルル。腹の虫が大声で鳴いた。「あ、お腹すいてるよね。三日も寝てたんだもの。このお湯を飲んで待ってて。いま、すぐに魚を採ってくるからね」「……はい」また一人になり、木のコップで白湯をすする。全身に温かみが染み渡る。ひとつだけ思い出した。私は魚が大好物だ。3

太平洋に浮かぶこの島の浜辺に、私は打ち上げられていたそうだ。助けてくれた女性は両親を早くに亡くし、一人暮らしだという。親切な彼女と、採れたて新鮮な魚のお陰で、私は順調に回復していった。魚がすごく美味しい。しかし、記憶は戻らない。4

それよりも気になるのは、彼女が時折見せる寂しげな表情だった。失礼かと思いつつも訊ねると、彼女が想いを寄せている相手が、非常に危険な状態にあるらしい。もう五年間、一口も物を食べず、山腹の洞窟に籠もりきりなのだそうだ。5

その者の名は“カベクイグソクムシ”。名前の通り、壁を主食とする体長3mの巨大甲殻類だ。魔人化により陸上生活に適応している。周囲の無理解という壁を気合い一発打ち破り、種族を超えた愛を育んできた一人と一匹だったが、不幸な運命がその間に立ちふさがった。6

日本への危険な旅を終えて島に帰ってきたカベクイグソクムシだったが、しばらくして様子がおかしくなった。食欲がなくなり、沸き起こる破壊衝動を押さえられなくなったのだ。道中でミュータント大海蛇を食べたのが、いけなかったのかもしれない。7

被害を出さぬ為、愛する女性を傷つけぬ為、カベクイグソクムシは人里離れた洞窟に籠もった。そのまま五年。呼び声には応えるので生きてはいるが、中に入ると襲われるため姿は確認できていない。「……私が、なんとかしてみる!」サイバネ少女は決意した! 8

「どうするつもり?」「洞窟に入って、とにかく会ってみる」「駄目、そんな危ないこと」「大丈夫。私にはコレがあるから」巨大なサイバネ腕を誇らしげに掲げる。「破壊衝動を発散したら元に戻るかもしれないよ。それに、私のサイバネは誰かの幸せを守るための力なんじゃないかって、そう思うんだ」9

「立ち去るがいい……あなたの命を奪いたくはない……」暗い洞窟の奥からくぐもった声がする。良かった、まだ生きてる!「やだよ! 今から行くからね! あっそびーましょ!」赤いサイバネ光をクローから放ちながら、サイバネ少女はズンズン奥へと進んでゆく。10

巨大なグソクムシが最後の警告。「後悔……グ……しますよ……グ、グオオオオ!」サングラスのような大きな黒い目の色が、燃えるような赤に変わってゆく!「ギャオオオォオォン!」完全に理性を失ったカベクイグソクムシは、獣じみた咆哮と共に襲いかかる! 11

サイバネ少女は巨大腕でカウンターパンチ!「うっりゃあーッ!」サイバネ破壊力炸裂! 体長3mの巨大グソクムシをぶっ飛ばす!「ぼっこぼこのヘロヘロにしてから、大好きな人のトコまで引きずってってやるんだからね! そしたら、美味しいお魚を食べなさい!」12

■第10話☆五年ぶりの食事(前編)■ おわり

■たたかえ蟹ちゃんシリーズ■第10話☆五年ぶりの食事(後編)■


サイバネ少女はアームのブースターで加速し、カベクイグソクムシに急接近!「でぃやぁーっ!」追撃のクロー攻撃! カサカサカサカサ! 14本の脚を素早く動かしゴキブリめいて回避するグソクムシ! そのまま壁面を登り広大な洞窟空間の天井に回り込む! 1

「ギャオォオオ! グギャアアァム!」天井に張り付いたグソクムシは鋭い触角を振り回し鍾乳石を切断! 槍のような石の雨を降らせる!「そぅれっ!」サイバネ少女は左アームを射出! 天井に突き刺さるアーム! 連結ワイヤーを巻き上げ、右アームで鍾乳石をガードしながら接近! 2

鋭い触角の斬撃が空中のサイバネ少女を迎え討つ! 右クローによる触角白刃取り! キュゥーン! アクチュエータ全開! 触角切断にかかる!「グギャアアオン!」苦しむグソクムシ! しかし固くて切断は失敗! 痛みで天井から脚を離すグソク! もつれて落下する一人と一匹! 3

下敷きになったのはサイバネ少女! 落下押し潰しダメージで動きが止まる! 先に起き上がったグソクムシは上体を起こし何かの予備動作! 大顎が開き……小顎が開き……口から熱線を吐き出す!「熱ちっ! 熱ちちちっ! そんなのアリ!?」サイバネ少女の柔肌が焼かれる! 4

「でも……」サイバネ少女は起き上がる!「狐の焔はもっと熱かった!」巨大サイバネ腕を盾にして熱線にひるまず接近!「喰らえーッ!」ズガンッ! インファイト距離に潜り込み、必殺のクローをグソクムシの腹に叩き込む!(狐……? 誰だっけ……?)5

強烈な攻撃を受けたグソクムシだが踏みとどまり、10本の脚による恐るべき連続攻撃を繰り出す!「ギャオグギャオオオン!」「確かに激しい攻撃だけどッ!」サイバネ腕を高速駆動! 連続攻撃をすべていなす!「蜂や絡新婦の連続攻撃はもっと迅くて凄かった!」6

連続攻撃を捌き切り、がら空きになったボディに!「でえええぃやぁああっ!」ブースト全開のダブルクロー山突き! ズガゴォォン! カベクイグソクムシの巨体が洞窟の壁に叩きつけられる! ……<女王蜂>、<秩序の守り手>、<闇の守護者>、<狂気の魔女>、7

<忘却の影>、<寝取られの聖女>、<愛の狩人>、<焔狐>、<無垢なる導き手>、<LoverSuitの女>、<絡新婦の仔>、<精気を啜るモノ>そして<未来支配者>。サイバネ少女の脳裏に次々と蘇る『転校生』の名前。すべて思い出した! 私は……私は……! 8

思い出した。恐るべき『転校生』達との戦いの日々を。(戦って、戦って、戦い抜いて、そして私は遂に……)カベクイグソクムシが突進してくる! サイバネ腕で防御! 突進の威力を殺しきれず弾き飛ばされダウンを喫する!(……一度も勝てなかった)9

(ダメだ……今回も勝てる気がしない……)負け続けの自分を思い出し、弱気になるサイバネ少女。だが決して諦めはしない!(勝てなくってもいい! 思い出した! あれは、ゆにばちゃんが言ってたグソク様だ! だったら!)クローを自分のセーラー服に引っ掛け……引き裂く! 10

サイバネ精密動作で下着までもが同時に破れ、サイバネ少女の未発達な胸部が露わに! 立体感の乏しいそれは……まさに『壁』であった。「グゴ……オオ……か……壁……見事な……」カベクイグソクムシの目が赤から青に変わってゆく! 極上の壁を目にして、五年ぶりに食欲が蘇ったのだ! 11

「す……『スタイリッシュ虫食い』!」カベクイグソクムシの全身が青く輝き、純粋壁喰い概念に変貌してゆく! ガオン! 壁喰い概念は亜光速でサイバネ少女の身体を通過し……『壁』を喰らった。もはやそこに『壁』はなく、サイバネ少女の胸は豊かであった。12

「御恩は一生忘れません」五年ぶりに再会した愛し合う一人と一匹は、サイバネ少女に心から感謝した。「いえ、礼を言うのは私の方です。全てを思い出し、このサイバネで成すべき事も解りました。私はこの腕で、大切な人と、この世界を守るために戦おうと思います」13

サイバネ少女はすごく大きくなった胸に決意を秘め、冷凍エビ貨物船に乗せてもらって日本に帰って行った。……しかし、悲しいことに日本につく頃には胸はしぼんでしまい、すっかり元の蟹ちゃんに戻ってしまったのである。14

「ヒャーッハッハ! このアリマンナ児童館は我々が支配する! 逆らえば殺すッ!」サイバネ少女の宣言が教会に響く!「そうはさせないよ!」屋根の上から巨大十字架を抱えた隻翼の天使・マリーが舞い降りる!「受けてみろッ!『天罰』ッ!」「グワーッ!」15

■第10話☆五年ぶりの食事■ おわり



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