普段とは全く違う、威厳に満ち溢れた立ち振る舞いの聖の口から、
朗々と歌いあげるような宣言が発せられた。
「女王の口から漏れ出づる、天のお告げを聞くがよい!!」
それに応じて、聖を取り囲むようにひざまずく一同より、和するように声が返される。
「天のお告げ、それは絶対!!」
満足げに大きく頷いた女王が、ついに臣民に向けてお告げを下す。
「我が星を守るキリ中尉……」
はたしてお告げの内容がどのようなものなのか、固唾を呑んで耳を傾ける一同。
だがそれは、想像の遥か彼方を駆け抜けていった。
「アサダを相手に接吻せよ!!」
ザワ……ザワ……。
あまりにあまりすぎるお告げの内容に、みんな信じられないように横目で周囲の顔色を窺う。
そんな一種の非難が込められたざわめきさえも心地よさげに受け止めた女王ミズキが、
穏やかな声音でお告げの実行を促した。
「キリ中尉。さあこちらへ……」
戸惑いのままに立ち上がり、女王ミズキの側へと歩みを進めたのは、里保だった。
期待通りと言わんばかりに微笑んだ女王が、さらに呼びかける。
「アサダも出てきなさい……」
この先の未来を思い浮かべ息を呑む一同。そして一人の少女が立ち上がった。
「え~、なんでまさがそんなことしないといけないのさ~」
不満を垂れ流しながら里保の元へと駆け寄ったのは、なんと優樹だった。
その姿を認めた聖の顔つきが、あからさまにがっかりと落胆したものに変わる。
「えっと……。接吻の場所は頬でもよろしいでしょうか?」
「もうどこでも好きにするがよい」
里保の問いかけにも投げやりに答えると、里保が唇を寄せて優樹の頬に軽く触れる。
微笑ましいその光景に、周りのみんなが安堵とともに拍手を送った。
「みんなは一体なにやってるの?」
さゆみが呆れ顔で春菜に尋ねる。
「これは譜久村さん発案の『女王イオタ様ゲーム』という遊びなんです。
トランプの勝者に何かいいご褒美はないか、というのが発端で考案されたものなんですけど。
勝者が女王イオタ様となって、他のみんなは事前に役名を書いた紙を配ってランダムに配役を決め、
女王が自由に天のお告げを下すという……。簡単に言ってしまえば王様ゲームの亜流ですね」
「なるほど、それでよりによって一番危険なふくちゃんが女王様になっちゃったわけか」
「それでは、残り90と飛んで8つの天のお告げを授けるぞ!!」
大ごとにならずに済んでホッとしたのもつかの間、憤懣やるかたない聖が暴走しだし、
みんな慌てて制止するのにまたひと騒動が巻き起こったのだった。
(おしまい)