彼女になりたいっ!!!


「ごめんなさい、急に呼び出したりしてしまって」

さらりと、事もなげに言うさくらに、亜佑美がかえって戸惑い言葉が出なかった。
数秒沈黙が続く。それから、何とか亜佑美が言葉を紡いだ。

「やっぱりさっきの、小田ちゃんだったんだね…」

「はい、そうです。
石田さんに話したいことがあって、だけど他の皆さんには出来れば黙っていたいことだったので
頭の中にお話しさせて頂きました」

さくらは穏やかな口調を崩さない。
だけど、話を急いでいるようにも感じた。


「手短に、率直に言います。
石田さんはカップルになりたいと思ったことはありませんか?
もし今からカップルになれるとしたら、なりたいですか?」

亜佑美はハッと息を吸い込み呼吸を止めた。

沈黙が訪れた。
亜佑美にとっては長い長い沈黙だったけれど、それは実際には数秒。
その間、亜佑美は身動ぎすることさえ出来なくなっていた。

頭が真っ白になる。
何も考えることが出来なくて、ただ頭の中に梵鐘のように
さくらの言った『カップルになれる』という言葉が木霊した。
さくらの様子を窺うことも、出来そうにない。

亜佑美の沈黙をある程度予想していたのだろう、
さくらは返事を待たず話を続けた。

「私の先生は、今その魔法を研究しています。
カップルでない人、自覚を持たない人が恋のキュービッドにより、だーさくさんになる魔法。
だけど、誰にでもなれるというわけじゃないんです。
石田さんと小田。二人だけに、その可能性があります」

「なんでうちらが…?」

震える自分の声を、亜佑美はぼんやりと聞いていた。
話の内容は、多分理解出来ている。
だけどまるで心が身体を抜け出して上から眺めているように
現実感も、感興も沸いてはこなかった。

「石田さんはご自身が『失恋体質』であることをご存知ですか?」







小田さくら 「スプ水先生」の指令により飛竜に乗ってM13地区にやって来た謎の少女。


(おしまい)

 

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最終更新:2016年06月12日 13:11