17歳の恋なんて


「恋は勘違いから始まる」

恋愛に関する格言の一つに、こんな言葉があるそうです。
必ずしも恋愛の全てが全てそうだとは思いませんが、
確かに勘違いをきっかけに始まる恋が多いというのも事実でしょう。

ではなぜ、勘違いが生じてしまうのでしょうか?

それは、自分の行動、そして言葉が、意図した通りに相手に伝わるとは限らないから。
……という、当たり前と言えば当たり前すぎる答えが、大きな要因だと思われます。

意を決して伝えた言葉がまったく相手に響かないこともあれば、
意図せぬ何気ない一言が相手の心を大きく震わせることもあります。

両者の認識の差異が思わぬ誤解や勘違いを生み、
そこから恋の始まりやすれ違いへと繋がっていく。

だからこそ恋愛は一筋縄ではいかない当事者にとっては難解極まりないものであり、
逆に傍観する側からすれば、世間には恋愛を題材とした漫画やドラマが溢れているように、
見ていてこんなに面白いこともないとも言えるわけです。


もしかしたら恋に繋がるかもしれない、そんな勘違い。
ここではそのわかりやすいサンプルを、実際に見ていきたいと思います。





13期メンバーが加入し、はるなにもついに後輩ができた。

これからは先輩らしくしっかりせえへんとあかんと気を引き締める毎日なんやけど、
それ以上に今のはるなが頭を悩ませているのは、後輩との接し方。

こう見えて人見知りが激しいはるなは、まず気軽に声をかけるのもハードルが高い状況で、
フレンドリーに話しかけてあっさり溶け込んでいる野中氏なんかホンマ羨ましいと思う。

もちろんこのままじゃあかんと自分でもようわかっとるし、
後輩との距離を縮めるええ方法はないかと常日頃から考えてはいたんやけど、
その絶好の機会が訪れたんや。


その日、かえでぃと初めて一緒に撮影の仕事があった。

撮影の仕事というのは、やってみて初めてわかることやねんけど、
撮影の合間の待ち時間が結構長いもんなんやで。

だから、話しかける機会はいくらでも作れるんやけど、
はるなにとっては最初の一言の切り出しが難しいというのが困りもの。

それともう一つ、やってみて初めてわかるのが、
撮影のスタジオって夏は暑くて冬は寒いという、ホンマ勘弁してほしい環境なんや。

その日はちょうどすごい寒い日で、はるな達はみんな厚いベンチコートを羽織って
寒さをしのいでいたんやけど、それでも身体の芯まで寒さが忍び込んでくるほどやった。

はるなは事前に用意していたカイロを両手で揉み込んで寒さをしのいでいたんやけど、
ふとかえでぃに目をやると寒そうに腕を組んだ格好で小刻みに身体を動かして
どうにか寒さに耐えている様子やった。

研修生として4年も在籍し多くの経験を積んできたかえでぃでも、
これほどのスタジオの寒さは初めての体験みたいや。
せめてカイロでもあれば少しはマシなんやろうけど、
初めてだけにカイロの準備をしておくということすら思いつかなかったんやろうね。

そこではるなに、突然のグッドアイディアが閃いた。
これってもしかして、かえでぃに話しかけて、
そして先輩としてかっこいい姿を見せる絶好のチャンスやないの?

『寒そうやね、かえでぃ。このカイロを使いな。
今の時期のスタジオは寒さが厳しいから、カイロは常備しとった方がええで。
あんまり寒いと肝心の撮影の時に笑顔が固くなるから気を付けんと』

かえでぃにカイロをあげて、この寒さをネタに話を広げれば、
きっといい感じでトークができそうや。

頭の中で話す内容を何度も繰り返しシミュレーションしたはるなは、
気合を入れてかえでぃの元へ向かい声をかけた。

「か、かえでぃ!」

いきなりどもって、恥ずかしさで顔を赤くなる。
呼び慣れない名前って、どうしてこんなに緊張するんやろう。


「はい」

いきなり名前を呼ばれ、ちょっとビックリした様子で返事をするかえでぃ。
ジッと顔を見つめられて、はるなの緊張がMAXまで振り切れる。
用意していた次の言葉が、まったく出てきてくれへん。

思わぬ沈黙に、かえでぃの表情が困惑に変わっていくのがわかり、このままじゃあかんと
半ば自棄になって手にしていたカイロをかえでぃにグッと突き付けた。

「えっ?」

「寒いから……これ」

どうにかそれだけの言葉を絞り出し、強引にかえでぃにカイロを握らせると、
それ以上耐えられなくなったはるなは、逃げるように小走りでその場を立ち去った。


居たたまれずスタジオを飛び出したはるなは、廊下の自販機の前でようやく一息つく。

かえでぃの前でビシッと決めるつもりが、なんてカッコ悪い姿を晒してしまったんやろ。
まさかここまでまともに喋れへんとは、もう自分にガッカリや。
かえでぃもきっと苦笑してるやろうな。

しかもカイロを無理やり渡したまではええねんけど、
自分が使うための予備を用意してないとか、さすがにドジすぎるやろ。
寒さしのぎを兼ねてせめてホットドリンクを買おうとして、
なぜか普段飲まない「おしるこ」を押してる時点で意味不明やし、
我ながら動揺しまくりで恥ずかしすぎるわ。

おしるこの缶を両手でギュッと握りしめたはるなは、
脱力とともに大きくため息をついた。



後輩にいいところを見せるはずが緊張のあまりまともにコミュニケーションを取れず、
無理やりカイロを渡して逃げ去ってしまった尾形ちゃん。

本人にとってはそれこそ黒歴史にしたいくらいの、
カッコ悪くて恥ずかしすぎるエピソードでしょう。

さらに言えば、尾形ちゃん自身どこまで自覚しているかはわかりませんが、
傍から見るとまるで「恋してる高校生みたい」な
微笑ましい初々しさを感じられる光景でもあったりします。


では、いきなり尾形ちゃんに声をかけられた立場の加賀ちゃんは、
この時の一連のやり取りをどのように感じたのでしょう?

尾形ちゃんが後悔の海に沈んでいるように、やはりカッコ悪く見えたのでしょうか??
または「恋してる高校生みたい」な挙動だと思ったのでしょうか??

それとも……。





その日の撮影のスタジオは本当に寒かった。

いくら寒い日とはいえ一応スタジオも室内ではあるしと、
なんの防寒対策も用意してこなかった自分の甘さを恨みつつ、
羽織ったベンチコートの温もりを逃すまいとギュッと腕を組んで身体を縮こまらせて、
さらには小刻みに身体を動かすことでどうにか寒さをやり過ごそうとする。

周りから見たらかなり挙動不審な感じだろうけど、
実際この極寒を前にそんなことを言ってられる状況ではなかった。

きっと事前に先輩に聞いていたら防寒対策についてのアドバイスが貰えたかもと、
寒さに身を震わせながらそんなことがふと頭をよぎったけど、
残念ながら私はそこまで積極的に先輩方とコミュニケーションが取れるタイプではない。

先輩方にも全く物怖じせずニコニコと話しかけていける
同期の横山ちゃんのコミュニケーション能力が、本当に羨ましい。

まあないものねだりしていても仕方ないので、
私は私なりにやっていくしかないのはわかっているのだけど、
それにしたってもう少し自然に先輩方と話せるようにならないとなぁ、
なんて、ボンヤリ反省していた時のことだった。


「か、かえでぃ!」

「はい」

いきなり名前を呼ばれて驚いて反射的に返事をしたけど、
私に声をかけてきたのは普段ほとんど話をする機会のない尾形さんだった。

普段は表情豊かでニコニコと笑ってるイメージのある尾形さんが、
やけに真剣な表情で私のことをジッと見据えている。

こんな真正面から尾形さんのことをまっすぐに見つめるというのは初めてだけど、
真顔だと端正な顔立ちがより際立って本当に綺麗だなぁ。
抜けるような白さの肌に、頬がほんのりと紅色に染まっているのが、
さらに美しさを引き立てている感じがする。

状況を忘れて思わず見惚れてしまったけど、ようやく違和感に気づく。
不思議な沈黙が続いているけど、尾形さんは何のために私に声をかけてきたんだろう??

そんな私の戸惑いにまるで反応したかのように、
尾形さんがポケットに入れていた右手をグッと突き出してきた。

「えっ?」

「寒いから……これ」

手にしていたカイロを強引に私に握らせた尾形さんは、
もう用件は済ませたとばかりにサッと踵を返し、颯爽と立ち去っていった。


これまで私が抱いていた、飄々としたイメージの尾形さんとは全く違う姿に、
私はただ呆然とその背中を見送ることしかできなかった。

寒さに苦しむ後輩のためにカイロを手渡すその気遣い、
しかも無駄口を一切叩かずに言葉より行動で示す男前なまでの立ち振る舞い。

手の中のカイロの温もりが、尾形さんの優しさとともにジワリと私の心に沁み込んでくる。
しばらくその余韻に浸っていた私は、そこで初めて自分の致命的なミスに思い至った。

雰囲気に呑まれて、尾形さんにちゃんとお礼の言葉を伝えられていないじゃないか。

このままではいけない。
こんな情けない後輩では、尾形さんに顔向けできない。

胸の内から湧き上がる強い想い。
そして私は…………。



緊張のあまり事前に伝えようとしていた言葉も消し飛び、
最低限のことしか喋れなかった尾形ちゃんの姿。
それを加賀ちゃんはなんと、無駄口を叩かず言葉より行動で示す男前な立ち振る舞いだと、
まったく真逆な捉え方をしてしまいました。

これはきっと、体育会系な加賀ちゃんだからこその勘違いということなのでしょうね。

それどころか、逃げるように立ち去った尾形ちゃんの後ろ姿ですら、
加賀ちゃんには颯爽としたものに見えてしまっているのですから、
知らぬが仏とはよく言ったものです。


尾形ちゃんにとっては後悔しかないその行動が、
思わぬ形で加賀ちゃんの心の琴線に触れることとなりました。

このことが2人の関係に、一体どのような影響を与えていくのか……。
なんて言ってる間に、さっそく加賀ちゃんが行動を起こしたようですよ。





静かな廊下に響くテンポの良い足音。
はるなが顔を上げるのと、強い調子で名前を呼ばれるのは、ほぼ同時やった。

「尾形さん!!」

目の前には、紛れもないかえでぃの姿が。
よほど急いで駆けてきたのか、軽く息を切らせてすらいる。

一体どうしてわざわざはるなのところに来たんやろ?
もしかして、「こんなカイロいりませんから返します!」とか言われるんちゃうかな。

すっかりネガティブモードに陥っていたはるなには、
真っ先にそんな最悪の想像が頭に思い浮かんだんやけど、
かえでぃの口から発せられたのは、そんな想像とは程遠い言葉やった。

「先ほどはカイロをいただきありがとうございました!!」

まさかの謝辞とともに、それこそ90度に至ろうかという勢いで頭を下げるかえでぃ。
まったく想定外の光景に、はるなの頭がすっかりパニック状態となるのも仕方のないこと。


「えっと……。わざわざそんなことを言いに、はるなのことを追いかけてきたん?」

「はい! お礼の言葉もちゃんと伝えられないようでは、後輩として失格ですから。
私もこれからは、尾形さんのようにしっかりと周囲に目配りができて、
何かあればすぐに手を差し伸べることができるような、そんな人間になりますので」

あまりに力強く真っすぐすぎる視線と、そして受け答え。
そのキラキラとした姿にすっかり圧倒されてしまい、
「ああうん」と呟くように返すのが精一杯やった。

そして流れる沈黙……。

ああ、これは完全にまずいヤツや。
先輩として何か適切な一言を口にせんと。

再びはるなに襲い掛かってくる極度の緊張。
気づいた時には、さっきの自分と同じように、
右手をグッとかえでぃに突き出していた。

「せ、せっかくやし、このおしるこ飲まへん?」

目の前に突き出されたおしるこの缶を前に、かえでぃの表情が驚愕へと変わる。
それも当然のことや。そんなことをしでかしたはるな自身が、
何をやらかしとるんやと一番驚いとるんやから。

今度こそホンマに軽蔑されても仕方ないか、と蒼ざめかけたその時。
かえでぃが堪え切れなくなったように大きく吹き出した。

「尾形さんって……本当に面白いですね」

かえでぃの笑い声に釣られて、気づけばはるなも一緒に笑いだしていた。
なんやようわからんけど、運よくかえでぃの笑いのツボを直撃してくれたみたいや。

ひとしきり2人して笑い合った後、かえでぃが改めて頭を下げた。

「おしるこは大丈夫です。
先ほどのカイロと、それに大笑いしたことですっかり心まで温かくなりましたから。
色々と気を使っていただきありがとうございました!」


軽やかな足取りで颯爽と走り去るかえでぃの後ろ姿を見送りながら、
はるなは安堵のため息をつく。

何が何なのかわからんことだらけやけど、
ともあれ結果オーライということでええんかな。

それにしても、かえでぃの体育会系全開の真っすぐさはホンマすごい。
それに、真剣な表情とあの笑顔とのギャップは、反則もんやと思うわ。
かえでぃにゾッコンなハロメンや研修生が、数多くおるという話も納得やね。

何しろはるなも、危うく「惚れてまうやろ!!」となりかけるところやったし。

もちろん、一瞬そうなりかけただけで、それ以上はなんもないで。
……いや、ホンマそうやねんから。


(おしまい)


※参考
https://youtu.be/LC-NRNxm8ng?t=632

320 名前:名無し募集中。。。@無断転載は禁止[] 投稿日:2016/12/29(木) 22:01:20.00 0
かがおがの時代が来るかw

尾形「かえでぃは、あの、春水最初、初めて一緒に撮影した時に、
    すごい寒い日の撮影で、なんか、どうしよ話しかけたいけどかけられへん、
    ってなって、フフすごい恥ずかしいねんけど、寒そうやったから、
    かえでぃにカイロぽって渡して走って逃げたっていう(笑)
    それでコミュニケーション取ろうとしたけど取れなかった」
まりあ「高校生みたい恋してる高校生みたい」


記念\(^^)/尾形春水
http://ameblo.jp/mm-12ki/entry-12242362175.html

あっもう一つ\(^^)/
『モーニングみそ汁』のミュージックビデオが公開されましたね!!!
もうチェック済みかな??笑

外での撮影は、少し寒かったけど
あたたかーいみそ汁を飲んでたので全然大丈夫!
よゆーのよっちゃんでした

13期加入したばっかりでなんか話したいけど勇気でなかった尾形が、、(>_>
かえでぃーにホッカイロ渡して逃げた日←

最近は、ふつーにお話してますよん\(^^)/


好きな先輩  女の園

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最終更新:2017年01月31日 20:19