スプ水先生の奇跡【最終章】  ~石田亜佑美の想い~


最初はただの気のせいだと思った。
気のせいじゃないとわかってからも、しばらくはただの偶然だろうと思っていた。

でもそうじゃなかった……と、思う。
それがあたしの勘違いでなければ。


その日の楽屋は、あたしの右隣がはるなんで、あたしで、その隣が……羽賀ちゃん?で、
その隣が小田っていう感じで、小田とは別に全然隣の席じゃなかった。

小田と気軽に話しかけられるような距離感ではなかったし、
第一、小田と積極的に話がしたいと思うような用件もなかったし……。

そんな訳でとにかく、何にも絡みがないまま終了しても
まったくおかしくないはずだったんだけど、小田とあたしは。

でも、何か羽賀ちゃんがいない時にフッて何か、鏡を見た時に、アレってなった。
フッて鏡を見たら小田も鏡越しにあたしのことを見てたから。

こうパッて目が合って、目が合うなと思ったけど別にそっから何か話をするではなく
その時は普通に逸らしたんだけど。

でもそんなことが、その日の内に何回も続くと、さすがにおかしいってなるわけで。


だから、また目が合った時に、今度はすぐに目を逸らさず鏡越しに見つめ返してみた。
いや気になるならさっさと話しかけて聞けばいいのにというツッコミもわかるんだけど、
それだとなんか負けたような気分になるのはあたしだけ?
まあそんなことはどうでもいいんだけどさ。

小田との鏡越しのにらめっこが、どれくらい続いただろう。
きっとほんの一瞬だったはずだけど、あたしには結構長く感じられた。

そして、小田が意味ありげに視線を外す。
釣られるようにあたしが小田の視線を追いかけると、その先にいたのは尾形だった。
席を外した羽賀ちゃんと、一見すると楽しげに話をしてる。
でもその実は……。

気づくとまた、小田の視線が鏡を介してあたしに向けられていた。
その意味を計りかねながらあたしが再び見つめ返すと、
今後はさっきとは別の方向に動く小田の視線。

反射的に追いかけたあたしの視線が捉えたのは、野中の姿だった。
横山の髪型を整えてあげながら、一見すると楽しげに話をしてる。
でもその実はやっぱり……。

そして再び、小田の視線があたしの元に戻ってくる。
たださっきと違うのは、その目の色が何か訴えかけてるように感じられたこと。

まるで阿吽の呼吸のように、あたしも小田の意図に気づく。
そうか、小田もあの2人のことを気にかけていたんだ。


もはや周りのメンバーに隠しきれてないほどに、悩み苦しんでいる様子の2人。
もちろんあくまでプライベートな問題なんだろうけど、
だからといって先輩としてこのまま放置しておくのもどうかとはあたしも思っていた。

「わかったから」という気持ちを込めて、小田に向けてほんの少しだけ頷いて見せる。
小田の瞳に安堵の色が見えたのを確認して、示し合わせたように2人は視線を外した。

ナニコレ、ちょっとこれって通じ合ってるみたいじゃない。仲良しか(笑)

内心で苦笑しながら、じゃあどうすればあの2人の関係を
うまく修復させることができるのか、という難問に向き合ってみる。

まず詳細からして不明だからできることなら2人から直接事情聴取したいところだけど、
心の問題というデリケートな部分なだけに、あまり考えなしに動くのも逆効果となりそう。

ただ2人のすれ違いの原因となるものは、なんとなくだけど想像できる。
特に尾形は、ビビりで優柔不断で、いかにもそんな感じだからなぁ。

……いかにもそんな感じ??
他人事のように言ってるけどそれって……。

その瞬間あたしは、卒然と悟ってしまった。

そっか、結局はあたしも尾形と、いや、あの2人と同じなんだ。
だから、2人が今こんなことになってるのは、ある意味あたしのせいなのかもしれない。
まあさすがにそれはちょっと大げさすぎるけど。

となると、今のあたしがすべきことは……。


「そうだよね。まずあたしから変わらなきゃ。
尾形のためにも。そして…………アイツのためにも」

神懸かり的に導き出したあまりに突拍子もない結論に対して、
なんでこんな冷静に受け止めることができているのか、自分でもよくわからない。

でもきっと、これでいいんだと思う。
先輩の立場として。いや、あたし自身の気持ちとして……。


念のために、その一日の終わりに何げなさを装って確認してみる。

「何か今日、すごい小田と目が合わない?」

「私も思ってました」

目をパチクリさせた小田の表情は、全部がわかった上でのわざとらしい肯定にしか見えず、
2人の以心伝心があたしの独りよがりじゃなかったことを密かに確信する。

「♪恋~しちゃったんだ~君に~」

そんなあたし達の様子を横で眺めていたくどぅーが茶化すように歌を歌い始め、
あたしは不機嫌な顔を作ってその肩口を思いっきり引っぱたきながら、
自分の決意を胸の奥でもう一度噛みしめてみた。


(おしまい)


※参考
170208配信(1) 「モーニング娘。'17のオールナイトニッポンモバイル」#102-1
パーソナリティ:石田亜佑美 

川c ’∀’)<
今回のゲスト、小田さくらちゃんとは、最近よく目が合うんですよ。
こないだ、大阪でイベントをやらせていただいた日に、楽屋が、えっとー、
私の右隣がはるなんで、私で、その隣が・・・羽賀ちゃん?で、だったよね?羽賀ちゃん、
で、その隣が小田っていう感じで、全然別に隣の席じゃなかったんですよ、
私と小田は。でも、何か羽賀ちゃんがいない時にフッて何か、鏡を見たんです。
フッて鏡を見たら小田も鏡越しに私のことを見てたんですよね。
こうパッて目が合って、目が合うなと思ったけど別にそっから何か話をするではなく普通に逸らしたんですね。
っていうのが、その日何回かあって。
で、その一日の終わりに、“何か今日、すごい小田と目が合わない?”って言ったら
小田も、“私も思ってました”って、いう、会話をしてたら横で、
そのさらに横で、くどぅーが、♪恋~しちゃったんだ~ 君に~ っていう(笑)、
歌を歌い始めたっていうのが(笑)、
ありました~~。(笑)
ハイ、そんなエピソードです。(笑)
そんな小田ちゃんはですねぇ、2月15日の配信から来てくれます。
お楽しみに!


~野中美希の想い~  ~黒幕達の想い~

 

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最終更新:2017年07月02日 22:04