シパパパ少女誘拐事件

※微エロ注意

 

魔道士同士の争いは多いが、大魔道士さゆみのニラミのおかげで
一般人には被害を及ぼさないことが不文律となっていたこの街で、
密かにうら若き少女が襲われる事件が多発しているという噂が広まっていた。
不思議なことに、被害者にはまったく襲われた記憶がなく、
その代わりにおもらしが後遺症として残るという。

魔道士のあいだでは、犯人はさゆみに違いないとまことしやかに囁かれていたが、
身に覚えがないと言い張るさゆみは生田に犯人を探し出すように命じる。

鞘師と協力して捜査を進めた生田によって明らかにされる、驚愕の真犯人とは!?


从*・ 。.・)<驚愕もなにも犯人がバレバレなの

ノノ∮‘ _l‘)<聖にはまったく見当もつきませんわ



「ちぇ、つまんねーの」

夕暮れの公園で、石ころを蹴飛ばしながらハルは毒づいた。

中学生になっても男の子っぽさが抜けないハルは、
放課後いつも幼馴染みのおでんと公園でキャッチボールや
追いかけっこをして過ごすのが日課だった。

それが、今日になって急におでんがもう一緒に遊べないと言い出したのだ。
理由を聞き出そうと詰め寄るハルに、おでんの返答は意外なものだった。

「夢を見たんだ・・・」

「夢!?」

「とっても綺麗な女の人が、可愛いって言ってくれて、それから・・・。
あの人にもう一度逢いたいから、ハルとはもう遊べない」

何を言ってるのかハルにはよく理解できなかったが、
顔を紅潮させながら遠い目で話すおでんに何も言い返すことができなかった。
それはハルが今まで一度も見たことがない「女」の顔だったから。


「どうしたの、こんなところで」

いきなり声をかけられて振り向くと、そこには髪の長い女性がいた。
顔は夕闇に紛れてよくわからなかったが、綺麗な人だとなぜかハルは思った。

「ふふふ、なにボーッとしちゃって。可愛いねぇ」

その言葉に訳も分からず胸が高鳴る。
おでんの言っていた女の人はこの人のことだ。
直感的に確信するとともに、心の奥底で激しく警鐘が鳴らされる。

このままここにいてはいけない。
本能的に危険を察知したハルは、何を言わずにきびすを返し、
女の人に背を向けて脱兎のごとく走り去ろうとした。

しかし。

振り向いた先にはなぜかその女の人が立っていた。
勢い余ったハルはその人の胸に飛び込む形となり、
そのままギュッと抱きとめられる。


「いきなり抱きついてくるなんて、見かけによらず甘えん坊さんなんだね」

全身で感じる肌とそしてふくよかな胸の柔らかさ。
鼻腔をくすぐるとろけるような香り。脳髄に直接響くような甘い声。
その全てがハルを包み込み、一気に思考能力が低下していく。

「そんなに甘えたいのなら、お望み通りいっぱい可愛がってあげるから」

火照る身体。全身にとめどなく押し寄せる大小数え切れないほどの波。
今まで味わったことのない快感がハルをとめどなく責め立てる。

「えっ、そんな、んっ、はあ! ああっ・・・んんっ!!」

シパパパパパパパパパパパパァ


夜中に目を覚ました時、ハルはいつもどおり自宅のベッドにいた。
一体何が起こったのかまったく記憶に残っていなかったが、
無性に疼く身体とオネショをしたかのように濡れそぼったシーツが、
ハルの身に起こったことを如実に物語っていた。


 

「どうして衣梨奈が?」

それは不満というより純粋に疑問の言葉だった。

この街で密かに発生しているという、少女が次々と襲われる事件。
魔道士の間で勝手に犯人扱いされていることに業を煮やしたさゆみが、
その事件解決を衣梨奈に命じたのだ。

「どうしてって、弟子が師匠の汚名を晴らすのは当然でしょ?」

「でも衣梨奈がこんな事件を解決できるとも思えないんですけど」

「大丈夫、生田に解決できる能力があるからさゆみが指名してるんだし。
生田も世界一の魔法使いを目指してるなら、これくらいの事件解決できなきゃ」

その言葉を出されると衣梨奈も弱い。

「わかりました。じゃあ里保と一緒でもいいですか?」

「うーん、りほりほは今回の事件だとあまり役に立たないかもしれないけどね。
まあ生田がそうしたいんなら好きにすればいいんじゃない?
事件の詳細についてははるなんが情報を持ってるから、まずはそれを元に動いてみれば。
まだなにか聞きたいことあるの?」

さゆみが珍しく言いよどんでいる様子の生田を促す。

「念のため確認なんですけど……本当に道重さんが犯人じゃないんですよね?」

「そうそう実はさゆみが全部……ってばか!」


衣梨奈がさゆみの雷を恐れて自室に逃げ込んだ後、
さゆみは春菜と通信を繋ぎ指示を出していた。

「……そんなわけだから、生田が情報を聞きに来たら対応をよろしく。
あと情報ははるなんの主観や推理は混ぜないでそのままで渡してね。
生田本人が考えて動かないと意味がないから」

「でも、本当にいいんですか?」

「なに、はるなんまでそんなこと言うの?
大丈夫、今回の事件は生田が適任だからちゃんと解決できるって」

「いや、生田さんの解決能力についてはそこまで心配はしていないんですけど……」

これまで魔道士の間でとびかう噂を集めそして整理していた春菜は、
もしかしたらという犯人の当たりがついていた。
それは正直信じがたい人物だったが、もしその推理が正しければ
生田にとってこの事件の解決はつらい経験を強いるものになるだろう。


「もしかしてなんですけど、道重さんは今回の事件の犯人ってもうご存知ですか?」

「えー、さゆみわかんなーい。なにはるなんもう犯人がわかってんの、すごーい」

あまりにわざとらしい返しに思わず苦笑する春菜。

「でももしわかってても生田に教えちゃダメだからね。
たとえどんなことが起こったとしても、それが生田にとって成長の糧になるんだから」

もし犯人が春菜の推理した人物だったとしても、あえて生田に解決を命じたさゆみには
きっと春菜にはうかがい知れない深慮遠謀があるのだろうと思い、
さゆみの言葉に素直に頷いた。

ただ……。

「生田はどこまで頑張ってくれるかな~」

と楽しげにつぶやく姿が、いつも内面を読み取らせないさゆみには珍しく、
いつになく何かを企んでいるように見えたのが、春菜にはどうにも気になった。

もちろん、賢明な春菜はあえてそのことを指摘しなかったが。

「どうしてまたこんな夢を……」

真夜中に目を覚ました聖が、つぶやきとともに重いため息を吐いた。

ここしばらく、聖は同じような悪夢に悩まされている。
それは、聖が見ず知らずの少女を連れ去り、そしてほしいままに弄ぶという
とても正視に耐えないような内容だった。
しかもおぞましいことに、襲っている少女が夢ごとに違う子なのだ。

「こんな夢が続くなんて、いつから聖は破廉恥な娘になっちゃったんだろう……」

(いつから? 聖は前からずっと破廉恥な娘だよね)

何気なく発した自問に、心の奥底からもう一人の聖の声が自答する。

「ううん、そんな訳ない! だって聖こんな夢なんか見たくないもん!!」

(うふふふ、そんなこと言ってごまかしてもダメ。よーく思い返してみなよ)

夢で襲われている少女の反応は様々だった。
じっと身体を固くして何かに耐えるように目を閉じる少女、
今まで経験したことのない快感に戸惑う少女、
そして積極的に自らの身体を投げ出す少女など。

いずれの少女も、最後には聖の手によって高みに登りつめ、
その恍惚の表情を思い返すだけで聖はもう……。


「違う! そんなことないんだから!」

夢の中に引き込まれそのまま身を委ねてしまいそうになるのを、
聖は強い口調によって危うく振り払った。

(ふーん、じゃあこの胸のドキドキはなんなの?)

夢の内容を思い返しただけで、止まらない顔の火照りと胸の高鳴り。

「それは、こんなリアルな夢を見せられたから……」

リアルな……夢?

そこで聖は、はたと気づいてしまう。
夢にしてはあまりにリアルにすぎないかと。

少女の表情だけではない。
柔らかくそしてかつ思春期特有の硬さを残した肌の感触。
その快感に耐え切れず思わず漏れる吐息と嬌声。
そして、

シパパパパパパパパパパパパァ

と、まるで意志を持つかのごとく勢いよく飛び散るしぶき。

これまでこんな質感を伴ったリアルな夢など見たことはなかった。
そう、これはまるで聖が自ら体感したことのような……!?


(そうだよ、ホントは聖自身が一番よくわかってるんだから。
これまでの体験は夢なんかじゃない。聖がずっとしたいと思ってきたこと。
そして聖は、それを実現して思う存分愉んできたんだよ)

自分の閃きに思わず震えが走る聖を、心の声が誘惑する。

(でもこれで終わりじゃないから。
まずは全部認めちゃお、聖がこんなにも破廉恥な娘だということを。
そうしたらね、聖の中にあるもっとすごい欲望を叶えることができるから。
そんなに独りで自分の殻に閉じこもってたら愉しめないよ?)

「違う違う! そんなの絶対ダメだよ!!」

もう、聖も気づいてしまっている。
あれほど嫌悪感しかなかったはずの夢の内容に、
そして到底肯定できないはずのもう一人の聖の誘いに、
抗いきれないほどに魅かれてしまっている自分がいることを。

「このままじゃ、聖おかしくなっちゃう!!」

(おかしくなるんじゃないよ。本来の姿に帰るだけだから、恐がらないで受け入れて)

「……助けて、えりぽん」

半ば無意識のうちに漏れた親友への助けを求める言葉は、
真夜中の闇に溶けそして虚しく消え去った。


「フクちゃん、どうして!?」

里保の必死の呼びかけにも、聖はただ神秘的な微笑みを浮かべるだけだった。

少女を襲う犯人をおびき寄せる最終手段、変装した里保を囮にした罠は見事に成功した。
(なお里保を囮に抜擢した理由は、万が一さゆみが犯人だった場合を想定してのもの)
だが、そこに現れたのは2人にとって信じがたい、いや信じたくない人物だった。

「コイツは聖と違う! 全ての元凶は聖に取り憑いてる淫魔の仕業っちゃよ!」

捜査を進めるうちに、聖が犯人ではないかという疑惑は確かに浮上していた。
だが、魔力など持たないはずの聖がどうして犯行をなしえようか。
その疑問に対し、衣梨奈が導き出した答えがこの「淫魔」の憑依であった。

「ひどいよえりぽん、聖は聖だよ。淫魔だなんてそんなひどいこと言わないで」

「うるさい! 早く聖の身体から出ていけ!」

取り付く島もない衣梨奈に、聖は悲しげな表情を浮かべる。
普段から何気ない仕草にふと色気を感じることのある聖だったが、
その憂いを帯びた潤んだ瞳の発する色香に引き込まれそうになり、
里保は無意識のうちに身震いした。

「里保ちゃんだったら聖のことわかってくれるよね」

その動揺を見逃すはずもなく、聖が里保に流し目を送る。

「ホ、ホントに聖ちゃんだったら、なんでこんなところにいるのさ」

 

「それはもちろん里保ちゃんに会いたかったからだよ。
だって聖、里保ちゃんのことが大好きだもん。
それにね、聖知ってるよ。里保ちゃんも聖のことが大好きなんだよね」

聖の瞳が妖しく光ると同時に、圧倒的な媚力が放出され里保の全身を包み込む。

「里保!!」

「あー、フクちゃんの肌が大好き。ふわぁ~♪フクちゃん気持ちいい♪
フクちゃ~ん♪フクちゃんフクちゃんん~♪んん~・・・気持ちいい♪んーー♪
・・・私のフクちゃんです。にゃーー!・・・・・・んんーー!可愛い♪うわぁ~♪
フクちゃんにやってください。ヤです。私のフクちゃんです。
私のフクちゃんを取らないでください。私のフクちゃんを♪私のフクちゃん♪
愛しのフクちゃ~ん♪愛しのフクちゃんへ♪(チュッチュッ、チュッ♪)
フクちゃん。♪い~としのフークちゃん。ハイ。わぁー!ンフフフフ♪
香音ちゃんの声聞こえた。フフフ。フクちゃん、私のフクちゃんです。
・・・やめてください!私の、私のフクちゃんですよ。
私のフクちゃんです!いや、フクちゃん、フクちゃんが可愛かった。
・・・・・・最近ちょっとヲタ気味な鞘師里保です。よろしくお願いします。
フフフフ♪どうしますか?
ちょっと最近、萌え気味な、いろんな人に萌え気味な(笑)、鞘師里保です。
フクちゃんの腕と♪フクちゃんのふくらはぎと♪フクちゃんのほっぺとフフフ、
フッフフフ。ん~フフフフ。フクちゃんの腕とフクちゃんの肌とフクちゃんの・・・
ふぅーー~ウヒフフフフ♪フッフッフッ♪フッフッ♪あぁ~~♪・・・・・・・・・
くどぅーの声と、何て言うの、どうしよ?フクちゃんの腕とフクちゃんのむ、
ほっぺたとフクちゃんの目とフクちゃんの耳とフフフ、フクちゃんの脚と手と
フフフフ♪どうしよ?もうヘンタイだ、もう。
あー、い、全てが愛しい鞘師里保です♪
よろしくお願いします。(笑)ちょっとヤバい。
りほりほ、いや私はフクちゃんの方が好きです。(笑)
フフフ、フフフフフ。あ、そうやって言おう。・・・・・・・・・」


衣梨奈の咄嗟の呼びかけに反応する様子もなく、上目遣いで聖を見やり
ニヤついた顔でなにやらブツブツと独り言を呟いたまま動きを止めてしまう里保。

「里保に何をしたと!」

「なんだぁ、里保ちゃんだったらきっとそのまま聖の胸に
飛び込んできてくれると思ってたのに、聖さびしいな」

どうやら最悪の状況だけは回避できたようだが、
里保が無力化されたことには変わりがない。

そして、聖の標的はついに衣梨奈へと向けられた。

「えりぽんだったら聖のことをわかってくれるって信じてるよ。
だって、ぽんぽんコンビは永遠だもんね!」

「!!」

魔法を唱えるいとまも与えられず、放出された媚力が一気に衣梨奈を包み込む。
それは何重にも絡み合い、じわりじわりと衣梨奈の四肢を束縛していく。
視界はホットピンクに霞み、充満した甘く柔らかな香りが意識を遠のかせる。

このまま衣梨奈が堕ちるのも時間の問題か、と思われたその時。
衣梨奈の懐から淡い光が立ち上った。


その光は、徐々に強さを増すと同時に、衣梨奈を包む媚力を見る見るうちに中和していく。
そして、衣梨奈の視界が完全に開けるとともに、光はさらりと消滅した。

それまで余裕の表情を崩さなかった聖が、初めて驚きに顔を歪める。
衣梨奈もまったく状況が掴めていなかったが、この好機を逃すことはなかった。

「里保を、そして聖を返せ!!」

衣梨奈のありったけの魔力をぶつけられた聖が吹っ飛び、そのまま床に叩きつけられる。
それとともに、里保も聖の媚力からようやく解放された。

「えりぽん、これは一体・・・!?」

「わからん、わからんけど・・・」

懐を探った衣梨奈の手に触れたもの。それは、里沙からもらったお守りだった。

「さゆみんの弟子になるんなら、これだけは絶対に手放しちゃダメだからね」

最後の別れの前に、そう言って里沙がこっそりと渡してくれたお守り。
これが衣梨奈のことを助けてくれたのだと知り、
衣梨奈は心の中で密かに里沙に感謝の言葉を捧げる。


そして、最後の決着をつけるべく、里保とともに倒れてる聖の元へと歩みを進めた。


衣梨奈の攻撃のダメージにより、聖はまだ起き上がることもできない。

「さあ淫魔を聖の身体から追い出してやるっちゃん!」

「・・・違うよ、えりぽん」

戦闘態勢十分の衣梨奈を制したのは、聖の媚力から解放されたばかりの里保だった。

「さっきね、フクちゃんの術を喰らってわかったんだ。
今のフクちゃんを操っているのは、淫魔なんかじゃない。
同じフクちゃんの中の別人格が暴走しているだけ。
だから、それを淫魔だと決めつけて無理やり引き剥がそうとしても、
それはフクちゃんの心を二つに引き裂いてしまうことになっちゃうよ」

「そ、そんなこと言われても、じゃあどうすれば聖を救えると?」

里保の予想外の言葉に戸惑う衣梨奈。
その間隙を縫って、よろめきながらようやく聖が立ち上がった。

「ひどいよえりぽん。ひどいよ里保ちゃん。みんなみんなひどすぎるよ。
どうして聖のことをイジメるの? 聖はただ、みんなと一緒にいたい、
みんなと一緒にいっぱいいっぱい楽しいことをしたいだけなのに・・・」

媚力の感じられない聖の言葉は、まるで駄々っ子の泣き言のように聞こえる。


「うちらができることは、ただ、フクちゃんに呼びかけることだけ」

そう言うと、里保はゆっくりと聖に近寄り、ふらつくその身体をそっと抱きしめた。

「里保!」

もしやまだ媚力の影響で操られたままだったのかと焦る衣梨奈。
しかし里保の声は落ち着いており、そして優しさに満ち溢れたものだった。

「ごめんねフクちゃん。もう痛いことはしない。
そして、うちらはいつもフクちゃんと一緒にいるから」

その言葉に、聖は一瞬驚いたような表情になり、そして嬉しそうに瞳を閉じた。

「フクちゃん聞こえる?
今、身体を乗っ取っているのは、淫魔なんかじゃない。
もう一人のフクちゃん自身なんだよ。
だから、怖がって目をそらさないで、その存在を受け入れてあげて。
大丈夫、全てを受け入れて一つになっても、もう乗っ取られることなんてないよ。
だってフクちゃんはフクちゃんだし、それにうちもついてるから」

「里保だけじゃない、衣梨奈もいるけん」

里保の意図を察した衣梨奈が、抱き合う2人をさらに包むようにハグする。
そして2人の温もりが、そのまま聖の心に染み渡っていった。


その頃、聖の意識は心の奥底に閉じ込められていた。

厳格な家庭で育った聖は、性的な存在全てを汚らわしいものとして強く忌避し、
身辺から遠ざける生活をずっと送ってきた。
その抑圧の反動故か、それとも聖自身が元から備えていた性質か、
いつしか聖の中には、可愛い娘が大好きだという感情と、
そして自らの手で存分に愛で、シパパパさせたいという欲求が生じていた。

しかし、普段から性的なものを嫌悪してきた聖が、
自分自身そんな性癖を抱いているなどと受け入れられるはずもなく、
無意識のうちに心の奥底に鍵をかけて封印し、その存在から目をそらしてきたのだ。

だが、聖の想像以上に聖自身の密かな欲望は大きかった。
封印された想いは、暗い心の奥底で抑圧された歪みを広げながら成長を続け、
ついには魔法に匹敵する強大な媚力を伴ったもう一人の人格を生む。

幾度となく聖の意識はもう一人の聖に乗っ取られ、
その存在を認めて一つになろうという申し出をそれでも拒み続けた聖は、

「じゃあ、貴女がしたかったことを聖一人で楽しんでくるからもういいもん」

という諦めの言葉とともに、ついにはそれぞれの立場が完全に逆転し、
本来の聖自身が心の奥底に閉じ込められることとなったのだ。


暗く冷え切った心の奥底で、聖はもう一人の自分のことを思う。
彼女はずっと、こんな閉塞した空間に独り閉じ込められていたんだ。
どんなに辛かっただろう、どんなに寂しかっただろう。
無意識のうちにやったこととはいえ、なんて酷い仕打ちをしてしまったんだろう。


その時、心の玄室に大きな衝撃が走り、その扉が音を立てて開かれた。
衣梨奈の魔法を受けた衝撃により、玄室の封印が解けたのだ。

開いた扉をくぐると、そこにはもう一人の聖の姿があった。

「・・・どうして聖のことをイジメるの? 聖はただ、みんなと一緒にいたい、
みんなと一緒にいっぱいいっぱい楽しいことをしたいだけなのに・・・」

その悲痛な声を受け、聖は迷うことなく行動していた。

「!!」

聖がもう一人の自分を抱きしめるのと、里保が聖を抱きしめるのは同時だった。
心の中に里保の、そして衣梨奈の声が届くとともに、
その温もりが暖かな光の粒となって2人の聖に降り注ぐ。

そう、聖にはこんなに素敵な親友がいてくれる。だから、もう逃げないよ。

「これまでずっと寂しい想いをさせて、本当にゴメン。
聖は、貴女のことが恐かった。自分がこんなに破廉恥な娘だなんて信じたくなかったから、
現実から目をそらすために、貴女にずっと酷いことをしてしまった。
でもね、ようやくわかったんだ。貴女は聖にとって大切な存在。
可愛い娘が好きなのも、破廉恥なことをしたいという願望も、
どれもこれも全部、聖の心の中の重要な想いの一つ。
これからは、いつでも一緒だよ。貴女の想いは聖が全て受け止めるから。
絶対に貴女に寂しい想いなんてさせはしない。
だからもう、周りの人に迷惑をかけるようなことはしないで、お願い」

聖の誠意あふれる言葉に、もう一人の聖が潤んだ瞳を向ける。


「本当に本当に、寂しかったんだよ。
・・・でも、今回だけは許してあげる。これからは、ずっと一緒だからね」

そう言って微笑むと、聖にそっと口づけをする。
そして、そのまま重なり合うように聖の中に溶け込んでいった。


「・・・えりぽん、里保ちゃん、助けてくれてありがとう。もう・・・大丈夫だから」

「聖!」「フクちゃん!」

本来の聖が戻ってきて喜んだのも束の間、聖の身体が脱力し、慌てふためく衣梨奈と里保。

「心配ないよ、力を使い果たして気を失っているだけ。ゆっくり休めば回復するから」

「道重さん! 来てたんですか」

「ええ、生田がちゃんとやってるかしっかり観察させてもらったよ。
生田はガキさんの護法で守られているから別に心配はしてなかったけど」

「新垣さんのお守りのこと知ってたんですか」

「もちろん。生田にはこの事件を解決できる能力があるって言ってたでしょ。
ただ犯人の正体を淫魔だと決めつけてたのはいただけなかったね。
でもりほりほのフォローのおかけで最後はどうにかうまく収まったし、
ギリギリ及第点ってところかな」

そんな話をしながら聖に近寄ったさゆみが、懐から水晶玉を取り出す。


「さゆみの力で、生田が淫魔と呼んでいたモノを無理やり剥ぎ取ることもできたけど、
それじゃあフクちゃんの心に大きな傷跡が残ってしまうからね。
でも、心がちゃんと一つに戻った今なら大丈夫」

さゆみが軽く呪文を唱えると、聖の身体からホットピンクの靄が立ち上り、
そのまま水晶玉の中に吸い込まれていった。

「心が一つになったとはいえ、一般人には強すぎる能力だからね。
身に余るパワーは封印させてもらったから、これでもう問題ないよ。
事件に関わる記憶も抜き取ったから、フクちゃんも今までどおりの生活が送れるはず」

聖の無事を喜ぶ2人に、聖の家族に気づかれないように
彼女を家のベッドに寝かしつけてやるように促すさゆみ。
これで事件の全てが解決したと胸をなでおろしながら、2人は聖を連れて家路へと急いだ。



「本当はフクちゃんの媚力がガキさんの護法を打ち破ってくれるのが理想だったけど、
さゆみにも破れない力相手にそこまで求めるのも無茶だしね」

独りその場に残されたさゆみが、水晶玉を眺めながら上機嫌で呟く。

「でも、このフクちゃんのエッセンスが手に入っただけでも十分に上出来。
これをうまく利用すれば、これまでできなかったこともたくさん・・・。
うーん、これからが本当に楽しみなの(スー)」

興奮を抑えきれないさゆみの含み笑いが、宵闇に静かに響き渡っていた。


夕暮れの公園で、ハルはひとり佇んでいた。

一時期の疎遠が嘘のように、放課後の公園で幼馴染のおでんと遊ぶ日々が戻っていた。
今となっては、なぜ疎遠になっていたのかさえ2人とも思い出せない。

ただ、以前と違うことがひとつある。
それは日も暮れておでんと別れた後、すぐに帰宅することなく
なんとはなしに公園でブラブラする時間が増えたことだ。

なんで自分はすぐに帰ろうとしないんだろう。
ハルが首をかしげる。

いったい何がしたいというのか。いったい誰を待っているというのか。
わからない。わからないけど、とにかくなぜだか帰りがたいという気持ちが抑えきれず、
日が完全に落ちるまで、今日もまたハルは公園で時を過ごしている。


「どうしたの、こんなところで」

いきなり声をかけられて振り向くと、そこには髪の長い女性がいた。
顔は夕闇に紛れてよくわからなかったが、綺麗な人だとなぜかハルは思った。

でも、あの人じゃない。

そんな言葉が頭に浮かび、それはすぐに疑問符に変わる。
あの人って誰のことだろう?


「ふふふ、なにボーッとしちゃって。可愛いね」

その言葉に訳も分からず胸が高鳴る。
あの人じゃないけど、あの人と同じくらいになぜだか心が揺さぶられる。

「可愛い顔して、ずいぶんボーイッシュな格好してるね。
ミニスカートをはいてもっと女の子っぽい服装をしたらいいのに」

「だ、誰がスカートなんか」

「うんうん、嫌がっているのを無理やり履かせるっていうのもたまらないよね」

何を言ってるんだろうこの人は。
よくわからないけど、その言葉には抗いがたい魅力があり、
最後にはこの人に身を任せてしまうのだろうと、ハルは訳もなく確信した。

「さあ、おいで」

女性がハルに手を差し伸べる。
言葉のままに腕を伸ばしたハルは、予想外に強く手を引かれ女性の胸に体を預ける。
そしてハルの無防備な唇に・・・


「・・・道重さん!! 道重さん!!!」


「ちょっと今いいところなんだから邪魔しないでよもう」

キーボードを打つ手を止めたさゆみが、不機嫌な声で春菜との通信を繋ぐ。

「ごめんなさい何度連絡しても反応がなかったので、
こんなことは初めてだったからちょっと不安になってしまって。
・・・ところで、その水晶玉の中に映る譜久村さんの姿はいったい?」

「最初にアカリちゃんとのキャッチボールのシーンを加えるといいと思いますわ。
そうすれば次にアカリちゃんメインの話に繋げやすくなりますから」

「なるほどね、さすがフクちゃん先のことまでしっかり考えてるの」


聖に負けないほどに可愛い娘が大好きで、その気になればどんな相手でも
ほしいままに弄ぶ力を持ち合わせてもいるさゆみがそれを現実のものとしないのは、
要するにただのへた・・・もとい、大魔女としての自制心の強さ故だった。
そして、その強い劣情をさゆみ本人が主人公の自作小説として昇華させ、
妄想の中だけでも数多くの少女との愛欲に溺れるというのが、
さゆみの数少ない趣味の一つであった。

しかし小説を書くと、どうしてもそれを人に読んでもらいたい、
そして感想や批評が聞きたいという願望が出てくる。
とはいえ、さゆみの性癖に理解と共感を示してくれる相手でないと
内容が内容だけに読ませるわけにもいかず、
読者の不在がさゆみの抱える大きな不満だったのだが・・・。

その不満を全て解消してくれたのが、さゆみが手に入れた「聖のエッセンス」であった。


水晶玉のフクちゃんのアドバイスはいつも鋭くそして適切で、
自分とは違う視点からの指摘にさらなる創作意欲も湧き、
今は執筆時間が足りないくらいなんだからという話をドヤ顔で語るさゆみに、
内心引き気味なのをおくびにも出さず相槌を打つ春菜。

「まあいいの。こんな話をしたんだから、
これからははるなんにも手伝ってもらうからね。
今度りほりほとの萌え萌えラブコメディを執筆予定だから、
はるなんは萌えパート担当で色々アドバイスをよろしく頼むの」

「えっと・・・私なんかでよければぜひ」

「聖のエッセンス」の力を得たさゆみがもし本気で己の欲望を満たそうとすれば、
この街の、いや全世界の少女に貞操の危機が迫りかねないことを思うと、
自分一人がさゆみの趣味に巻き込まれる程度で済むならば万々歳だろう。
それに自分も、萌えの分野に関してはそれなりの知識とこだわりがある。
どうせ巻き込まれるのなら、いっそのこと一緒に楽しんでしまおうかと、
半ば破れかぶれで春菜は腹をくくった。

「鞘師さんは存在自体がギャップ萌えの塊のような人ですから、
やはり名うての執行魔道士としてのクールな姿を見せるとともに、
ポンコツなプライベートをうまく強調して萌えを誘導していくべきでしょうね」

「なるほどね、じゃあそれにさゆみを上手く絡ませるには・・・」

「でもそうなるとえりぽんの存在が・・・」

このように3人(?)の熱い議論は途切れることなく続き、
なんだかんだありつつも、こうしてM13地区の平和は守られたのであった。


(おしまい)

M13地区を震撼させた少女誘拐事件もこれでようやく解決です
例によって思いつきの1レスネタから強引に話を広げたので
気づけばスレ3つを跨ぐダラダラと長く疎漏の多い内容になってしまいました
明らかに犯人がバレバレの状況を全て承知の上で話を盛り上げていくには
やはり自分の能力不足だったと反省しきりです

実は「自作小説」にもこっそり元ネタがあるので
もしよければそちらの方も軽く目を通してみてください
すべての内容と元ネタの所在をまとめると以下のとおりになります

スレ3 708、723-725
スレ4 670-672、716-718
スレ5 72-76、255-260、552-555
「ガキさんの護法」元ネタ(無断借用) スレ3 676
「自作小説」元ネタ スレ1 991-993


なお自分はエロの具体的描写がまったくの苦手で
なんとなくエロっぽい雰囲気で誤魔化しつつ書くのが精一杯だったので
(自分にとってMAXエロは黒猫のはるなんを堕とすことくらい)
ガッツリなエロを求めていた方の期待には全く応えられず申し訳
ガッツリエロ方面は>>477さんをはじめ得意な書き手さんにお任せしたいと思います

 

「ガキさんの護法」元ネタ(無断借用) 3スレ 676

676 名前:保全代わりの駄文ヤシ[] 投稿日:2013/10/28(月) 22:58:44.20 0
頬が火照り、息が弾む。
体が宙を漂うように感じる。
身体の奥底からシャボン玉が膨れ上がり弾けるようで
自分が自分でないような不思議な感覚に翻弄される。
このところ毎晩のように訪れる不思議な夢、いや夢なんかじゃない。
今、自分が感じてる快感は紛れもない本物の悦楽だから。
証拠に下着はもうぐっしょりと濡れているから。
でも、不思議なのは自分の指はどこにも触れていない。
そう、透明人間に愛撫されているように自分は何もしていないのに肉体が勝手に悦楽をむさぼっている。
まだ中学生なのに・・・バージンなのに・・・いつのまに聖はこんなふしだらな娘になったの?
でも、声が抑えられない。
「ああああっ、逝っちゃううううっ。聖逝っちゃうううううう!」
腰の奥からとてつもない快感が背中を駆け上がっていき、聖の意識は今夜もエクスタシーの大波にさらわれていった。

「ふふふ、本当に敏感な子なの。でも、もっともっと感じて貰わないと・・・」
そう、道重さゆみの不老長寿を支えるのは処女が感じる快感であった。
処女に与える快感が強ければ強いほど魔法の効果はより若々しく美しく働く。
その為にさゆみは様々な変態じみた魔法を開発していた。
離れた場所の女体をその場に居ながらにして愛撫し快感におぼれさせる魔法。
さらに性転換の魔法によって得た男根を挿入する魔法すら開発していたのだ。
そんなさゆみの餌食になった娘は100人を優に超えていた。
ただ、生田衣梨奈だけは危険を予知した新垣理沙の護法によって守られていたが、二人同時に守れないという限界があった。

協会現役最強の鞘師里保が餌食になるのも間もなくであろう・・・
しかも、実は鞘師は譜久村聖をはるかに上回る敏感な肉体なのだった。
憐れ鞘師が変態と化すのは時間の問題であろう。

 

「自作小説」元ネタ 1スレ 991-993

991 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2013/09/29(日) 02:12:20.12 0
「『泣きながら真莉愛は震える手で自分の服に手をかけた』……っと」

キーボードを打つ手を止めたさゆみは、今後の展開を妄想して
気持ち悪い笑みが溢れるのを抑えることができなかった。

さゆみの能力を以てすれば、実際にこの自作小説のようなことを
現実のものとすることも難しいことではない。
それをしないのは、決してへたれだったり勇気が足りないという理由ではなく、
最低限の節度を持ち合わせているからだと自分に言い聞かせている。

でも、初めて鞘師の存在を認識した今では、その節度も揺らぎかけている。
いつか……。そう、遠くない未来に、りほりほのことを……。

 

993 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2013/09/29(日) 02:13:22.01 0
この自作小説のターゲットにして妄想の中で好きなように弄んでやるの。


そんな想像しただけで、思わず目眩がしそうなくらいの興奮に襲われる。

「おっと、そろそろ二人が戻ってくる頃ね」

よだれを垂らさんばかりの弛緩した表情はさすがに他人には見せられない。
表情を整える魔法を一言唱えると、一瞬にして端正なマスクがかんばせに舞い戻ってきた。


洗い物を終えた二人が一度リビングに戻ると
さゆみはまたノートパソコンを開き、熱心に画面を見ていた。

「ちょっと練習してきます」

衣梨奈が声をかけると、
パソコンから目を離さず返事をする。

「いってらっしゃい。気をつけてね」

「はーい」

(おしまい)


勝手に続けてしまったけどゆるしてにゃん

 

 

 

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最終更新:2014年02月10日 22:56