「そこまでだ!悪党ども!」
「誰だ貴様!」
「魔法の秩序を乱すヤツはこの私が許さない!」
「お前はもしや美少女魔道士石田亜佑美?!」
「あなたの悪事はお見通しよ!覚悟しなさい!!」
「うわ~助けてくれ~」
「ああもう、五月蝿いってのあゆみん!!!!」
自分の世界に浸り込んでいた亜佑美が目を開けると、
二段ベットの上から遥が顔を出し、亜佑美を睨みつけていた。
「なによ、大事な朝のイメトレの邪魔しないでくれる?」
「なにがイメトレだよ、朝っぱらからブツクサと自分に都合のいい妄想を聞かされちゃ
たまったもんじゃないっての。ハルの気持ちのいい寝覚めを返してくれよ」
「憧れの執行魔道士になるための大事な訓練なんだから、少しくらい我慢してよ」
「ダメダメ、そんなしょうもない訓練とやらをするんならハルのいないところでやりな」
毎朝続いていた亜佑美のイメトレがよほど腹に据え兼ねたのか、
まったく譲る様子を見せない遥。
「わかったよ、じゃあ独り寂しく訓練して強くなってやるからもういいよ。
……どぅーのドケチ!!」
ベッドから飛び起きパパッと着替えた亜佑美が、捨て台詞とともに施設の部屋を飛び出していく。
遥は二段ベッドの上からその姿を見送り、苦笑いとともに呟いた。
「ほんとガキだなぁあゆみんは」
○
イメトレを始めて1ヶ月、その成果は確実に出ている。……と、亜佑美自身は感じていた。
少なくともイメトレの中では連戦連勝ほとんど負け知らずで、その実力を存分に発揮できていた。
だが、唯一の例外が一人だけいた。それが、鞘師里保だ。
以前、魔法競技会の決勝で亜佑美を破った因縁の相手。
遥にはギリギリ負けただけと強がって話していたが、
実際のところ実力的に相当の差があったことは、戦った本人が一番よくわかっていた。
それからは、せめてイメトレの中だけでもと何度も戦いを挑んでみたものの、
一体どうすれば勝てるのかまったく想像もつかず、
いつも返り討ちにあってばかりという悔しい状況が続いていた。
「あーあ、どうして勝てないんだろうなぁ」
公園のベンチで大きく伸びをしながら、思わず独り言がこぼれる。
「どしたのあぬみん」
「ああ、まーちゃん」
優樹にこんなこと話しても仕方ないと思いつつも、遥に邪険にされた後だけに
声をかけてくれたのが嬉しくもあり、悩みを軽く打ち明けてみる。
「ふーん、そのヤスシさんってどんな人なの?」
「ヤスシさん? ああ、鞘師さんのことね。どんな人って言われると……」
考えてみれば、自分は鞘師さんのことをほとんど知らない。
優樹に聞かれて、亜佑美は初めてその事実に気づいた。
「そっか、本気で勝ちたいと思うんなら相手のことをもっとよく知らないとダメだよね!
敵を知り己を知って……えっとなんだっけ、とにかくなんとかいう格言もあったと思うし!
ありがとうまーちゃん! これで鞘師さんに勝てるきっかけが掴めそうな気がする!!」
ベンチから立ち上がった亜佑美が、そのまま勢いよく公園を飛び出していく。
優樹はその後ろ姿を呆然と見送り、笑いながら呟いた。
「ほんとガキだなぁあぬみんは」
○
鞘師里保さん。
執行局局長の娘、正確には養女らしい。
うちより1つ年下なのに、魔法競技会で戦った時にはすでに特待的な扱いで執行局員だった。
もちろんそれが「局長の娘」というコネのおかげではなく、
純粋に実力によるものであることは、戦ったうちが一番よくわかっている。
今にして思えば、戦った時も鞘師さんはまだ本気を出してなかったのかもしれない。
その時の様子をもっと深く思い返してみる。
印象的だったのは、呪文を唱えている時の険しい表情。
いや、それだけじゃない。うちに勝って優勝を決めた時にも、
鞘師さんは笑顔の一つも見せていなかった。
やっぱりそれくらいストイックでなければ、あの年齢で執行魔道士にはなれないんだろうか。
でも、なにかが違う気がする。なんだろうこの違和感は。
そうだ、鞘師さんの様子がまったく楽しそうじゃないんだ。
魔法っていうのはもっと、新しい魔法が使えるようになるのが嬉しくて、
魔法を使いこなせるようになり自分の実力が伸びていると実感できるのが楽しくて、
未知の魔法にめぐり合えるとドキドキする。そういうものだと思う。
執行魔道士ともなると、そんな甘ちゃんなことは言ってられないのかもしれない。
でも、うちはずっと魔法を使える喜び、楽しさを持ち続けていたい。
たとえその一点だけでも、うちが鞘師さんより優っていることがある。
かなり強引だけど、そう考えるだけでなんだか先の展望が開けるような気がしてきた。
いつか鞘師さんにリベンジする時には、鞘師さんに魔法の楽しさを
思い出してもらえるような、そんな戦いができればいいな。
そうすればきっと、鞘師さんの表情にも笑顔が戻る。そんな気がする。
整った顔立ちの鞘師さんだから、きっと可愛らしい笑顔だろうな。
「うちの負けだよ、亜佑美ちゃん。強くなったね本当に」
潔く負けを認める鞘師さんの、爽やかな笑顔。
「はい、やっとリベンジできました。
やっぱり鞘師さんは笑顔の方が可愛らしくて素敵ですよ」
「亜佑美ちゃんも唇に厚みがあって素敵だよ」
「ふふっ、やめてください。鞘師さんのその薄い唇も素敵ですよ」
なーんてやりとりがあったりして。きゃー恥ずかしい(照)
ともあれ、いつかリベンジするその時まで、しっかり修行して
鞘師さんと対峙しても恥ずかしくないだけの実力を身に付けないと。
うーん、楽しみだなぁ。またいつ会えるかなぁ、鞘師さん。
○
「ねぇまーちゃん、この頃あゆみんの様子がちょっと変だと思わない?
イメトレとか言って独りでブツクサ呟いてるのは前からあったけど、
なんか急にニヤニヤしたり照れだしたり、気持ち悪いったらないんだけど」
「うーん、コイだねそれは」
「恋ぃ!? それって単純バカのあゆみんには一番似合わない言葉じゃんかよ。
つーか相手は誰だよ??」
「えっとねー、ヤスシさん?」
「ヤスシィ!? あゆみんの知り合いにそんな名前のヤツがいた記憶はないけどなぁ。
つーかなんでまーちゃんがそんなこと知ってんのさ」
「イヒヒヒヒヒ、どぅーには教えてあげないよーだ」
「なんだよそれ。ずるいぞまーちゃん、意地悪しないで教えろよー!!」
(おしまい)
※参考レス
458 名前:名無し募集中。。。@転載禁止[] 投稿日:2014/03/16(日) 20:55:30.98 0
外伝でだーいしの一人遊びとか
459 名前:名無し募集中。。。@転載禁止[] 投稿日:2014/03/16(日) 22:02:41.89 0
>>458 こうですかわかりません><
川c ’∀´)<そこまでだ!悪党ども!
だ、誰だ貴様!>(‘∀´ c川
川c ’∀´)<魔法の秩序を乱すヤツはこの私が許さない!
お前はもしや美少女魔道士石田亜佑美?!>(‘∀´;c川
川c ’∀´)<あなたの悪事はお見通しよ!覚悟しなさい!!
うわ~助けてくれ~>(‘∀´;c川
川c ’∀´)<ふぅ・・・今日もイメトレは完璧だわ