ぽんぽんコンビに勝ちたい。
いつからかそれがうちの密かな目標になっていた。
悔しいけれど、2人でコンビを結成するだけあってえりぽんとふくちゃんの相性は抜群だ。
でもいつまでも「ビジネスぽんぽんビジネスぽんぽん」と負け惜しみを呟き続けるわけにもいかない。
うちの力でぽんぽんコンビを打ち破り、そしてえりぽんとのピンポンダッシュを復活させる!
そう固く心に誓い、うちはこれまで独りコツコツと修行を重ねてきた。
そして今日ついに、ぽんぽんコンビに挑戦状を叩きつける!!
ただその前に、ぽんぽんコンビにうちだけで立ち向かうのはさすがに無謀というもので。
うちも誰かとコンビを組んで対抗しないといけないのだけど、そのパートナー選びが悩ましい。
うちとの相性的には香音ちゃんとのりほかのコンビが最適だろうけど、
この2人のコンビだと重厚すぎてスピード感に欠けるのが難点だ。
スピードでいえば亜佑美ちゃんとの鞘石が一番だろうけど、
亜佑美ちゃんの唇が間近にあるとそっちに目が奪われて
うちがまったく集中できないというのが一番の問題。
どぅーはふくちゃんとの相性が最悪で勝てる気しないから問題外だし。
となれば残るは……。うんこれは大きな賭けになるけど、
ぽんぽんコンビに勝つためには、うちのパートナーはこの娘しかいない!
そしてうちら2人は、強大なぽんぽんコンビに戦いを挑むことになった。
「ぽん!」
「じゃあえりもぽんすると」
「ちょっと~、2人してまたポンなの?」
「だってえりたちぽんぽんコンビやけん」
「うん、ぽん大好き」
ぽんぽんコンビの意外な才能が開花したのは、なんと麻雀によってだった。
2人が繰り出すポンからのトイトイ速攻により連戦連勝、コンビの絆を存分に見せつけていた。
さらに言えば、面前でじっくりと手作りを進めるタイプのうちにとって
鳴いて場を荒らしまくる2人との相性は最悪。まともに戦ってもまったく勝負にならない。
でも今日こそは、うちが修行の成果を見せつけ2人を倒す!
打牌の最中こっそり呪文を呟くと、うちの親指から微小な炎があがる。
「鞘師さん、魔法でのイカサマは一発レッドカードですからね」
「う、はるなん」
「ちなみに私、『ムダヅモ無き改革』もちゃんと読んでますから」
修行によって編み出された、炎の魔法で牌の表面を抉り白を作り出す「轟盲牌」。
それがまさかのはるなんの口出しによって封じられてしまった。
こうなると最後の期待はパートナーの奮戦しかない。
うちが対面に目をやると……そこにはおぼつかない手つきで理牌する優樹ちゃんの姿があった。
そう、うち組んだのは優樹ちゃんとのしゅわぽくコンビ。
優樹ちゃん相手じゃコンビ打ちなんて絶対無理だけど、
その驚異的なまでの豪運に全てを託してみたんだ。
ぽんぽんコンビ圧倒的リードで迎えたオーラス、ついに優樹ちゃんが動く!
「それロン! まさもトイトイできたよ!!」
「面前のトイトイ、しかも単騎待ちって……」
「それってスッタン(四暗刻単騎)やん!!」
「えっ、これって高いの!? イエーイまさの逆転トップだすごいでしょ~!!」
うんすごい、本当にすごすぎるよ優樹ちゃん。でも……。
なんでよりによってその役満をうちから直撃するのさ!!!!(泣)
「コンビ2人の合計点で勝敗を決するルールなので、勝者はぽんぽんコンビですね」
「やった~!!」
「ぽんぽんコンビ最高だぜぇ!!」
「えっなにまさたち負けたの!? まあいっかまさはトップだから」
ああ、うちがぽんぽんコンビを倒し、ピンポンダッシュを再結成できる日は
一体いつになったら訪れるんだろう。
ビジネスぽんぽんビジネスぽんぽんビジネスぽんぽん……
(おしまい)