ホ―リーランドクラブSS『英子と四囲美の人間革命R』OP

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「うわわわわわわわわーーん、四囲美どーーーしよーーーーー」

そのぶっちゃけありえない事態に、部室に戻ると同時に私こと林葉・英子は
ひしーと心の友の四囲美に抱きついた。よしよしと慰めをうけながらも、それで
この絶望的な事態が改善するわけでもなく。ただただその豊満な胸に蹲り、
泣きわめくしかなかった。ああ、一難さってまた一難。


◆◆

~遡ること一時間前の生徒会執行部~

「なんでうちの部が悪・即・廃部になるんですが!!!!!納得いきません!!」

ばああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん

私は生徒会室の応接用のテーブルに思いっきり両手を叩きつけると向かいの相手に
前ノメリ姿勢で向かい合い、一歩も引かないぞーと言う意志表示を示した。

応対に出てくれたのは生徒会役員の避所之・秘書子さん(特技:ひしょひしょ話)、
こちらが気が落ち着くまで待っていたのだろうか、暫くすると慣れた様子で徐に
資料をめくりながら話始めた。

「ハイハイ、フォークソング部所属の林葉・英子さんですね。」
「…あっ、ハイ。」
「フォークソング部。主な活動内容は各国の民謡や文化の研究。必要によっては
研究に付随した遺跡の探索等も行う。
在籍者2名。本年の実績・・・」

「特になし。」

「う。」
痛いとこ、さり気についてきた。秘書子さんは続ける。

「まず誤解があるようですが、フォークソング部は人数要件を元々満たしていません。
そして過去の実績はともかく現状は貴方の部は完全なポテチ部です。
部同士の抗争でとっくに潰れてても可笑しくないレベルなのですよ。それでも辛うじて平穏に
生き延びてこれたのは『フォークソング部にある像』に関して一切、アンタチャブルとすることと
いう申し送りが過去”部連”にあった故なんですよね。」

で、貴方はその像の管理をしていたわけですから、今どうような状況か把握していますね。
そう云われて私は半年前の記憶を巡らす、彼女のいっているのは『あの女王様』のことだろう。
先の黙示録に先立ち、荒ぶるのもじ像に降臨し、学園内で好き放題暴れまくった超傍迷惑なドS女王様の
ことだ。彼女は最終的に生徒会役員の夢売誘子に潜む Sの眷属 アビメルムの現象を打ち破った。
左手の[A・o・H]で悪夢を吸い上げ地に映した彼の影を常夜に返したのだ。これにより常世に潜む
潜在的世界の危機が一つ去ったらしい。
…何を言っているか判らないだろうけど私も受け売りなので正直何を言ってるか全く判らない。

「今、その像がなくなりました。あの像は先の黙示録に先立ち、自由意思を得て、学園内で好き放題
暴れまくったあげく最終的に番長側に加担、あろうことか…」

ここで端麗な秘書子さんのこめかみに青筋が浮かぶのが見えた。そうそう問題はその後ですね…

「その後、パントマイムで話しかけられたヨシオ様の高貴なるド頭に『キチンと喋らんか若造!あと
わらわは初めから像だ。ちゃい技など効かん』と飛び蹴り食らわして、どこぞに行方晦まし
やがってるわけですが、それらを踏まえても潰すなとおっしゃられるわけですね。」

ピーターン。次の瞬間、ほぼ反射的に猛烈な勢いで背を90度直角に曲げる自分が居た。

「その切は!うちの像が!大変な失礼!申しわけございませんしったっ!」

勢い余って机に今度は両手ではなく額を叩きつけることになったがそれどころではなかった。
廃部の件で頭に血が上ってすっかり失念していたが、あの人、あの後キッチリやらかしやがったんだった…
そういう意味ではここは完全な敵地である。
ぐさぐさぐさ。
なんだろう急に周囲の温度が下がって、何かがあちこちから殺意的なナニカが突きささってくる気が
してきたぞ周りからの視線が急に痛く感じるのは、うん、きっと気のせいだろう。
秘書子さんはため息をつく。

「まあ、ある意味申し送り通りのアンタチュブラーな有様でしたし、その件はヨシオ様の寛大にも
不問に処されたので、ホント個人としては色々思うところは有りますが、責任追及いたしません。
でもホントもうアレはね…。ええと、ハイ、じゃ話題戻しますよ。」

そういいわたくし英子の手に渡される一枚の用紙。
「…へ、廃部決議の取り下げ申請?」

「そう廃部決議は取り下げ可能です。
今回、生徒会は部活動の規定に満たさない部の整理を決定いたしましたが、生徒会費ねん出の為の
陰謀だと吹聴する輩もいますが、何も全部が全部、廃部にしようとしているわけではありません。
”どうしても続けたいという熱意がある部”に関しては特例的に存続を認めるということになっているんです。」

…特例的に存続を認める?
わたくし英子の手がプルプルと震える。おおおおうう…これは…

「条件はプリントに書かれている通り、期間中に下記の生徒会特別役員メンバーの同意を得ること―以上です。」

「ぜ、全員からサインか印鑑もらえばそれだOKなんですか」

、、、、、、、、、、、
「ええ、条件はそれだけです」

カツ!!先ほどとは違った意味で全身の血が沸き立つのを感じた。
ヤッター!アリガトウございます!
そして私は小躍りしながら生徒会室から駆けだしていったのでした。第三部完。



◆◆

「ってなことがあったわけね。たしかにこれは…絶望的状況だわ。」
抱きつかれた四囲美は改めて英子が渡されたというプリント用紙を見やる。

『取り消し申請の有効期日は「鬼雄戯大会」開催期間終了まで、希望者は”大会に参加し”
下記特別役員の承諾を得ること』

”どうしても続けたいという熱意がある部”へ仕掛けられた魔のハードルがこれであった。
大会は情け無用のバトルロワイアル。そして遭遇即必殺の精神で徘徊する生徒会特別役員が、
出あった部活動参加者をどうするかなどとあえて語るまでもないことであった…
この文章は廃部が嫌なら特別役員と総当たりで対戦してこいという死刑宣告に等しかったのだ。

「ふえええええええええええええええん。先輩から預かった部がなくなっちゃうよ。」
「……まあ、勝ってこいと書かれてないとこだけは、まだ慈悲(?)があるわね。」

四囲美は涙でぐちゃぐちゃになった英子の顔をハンカチで拭いてやり、最後に鼻も噛んでやる。
「ちーん。」
「確かに私達だけじゃどうしようもなさそうな案件だわ。
どうする、英子?先輩に連絡取って見る?先輩にお願いすれば”何とかしてしまう”可能性あるわよ」

その四井美の問いに英子はふるふるふると首を振る。
それだけは絶対に出来ない。私が先輩から「後お願いね」といわれ預かったのだ、そして私は
「任せて下さい」と返したのだ。今更先輩の手を煩わせるなどありえない話だった。
それが「現場のルール」だってモラウさんも確か31巻あたりでいってた。

「まあ英子ならそういうわよね。じゃ、もう一人のほう頼って見る?」
「??」

首を捻った英子に四囲美は苦笑して続けた。その手には携帯。
「ある意味こっちのほうが当事者。妃芽薗に向かったはずだけど。私の弄ってもらった携帯なら確実に繋がるし。」
「あ。」


◆◆

数回の呼び出し音の後、魔法陣中央の置かれた携帯の上にずいんと女性の立体映像が浮かぶ。
そして、一通りの事情を聞いた女王様は射居丈高にこう断言した。

『た・わ・け。
、、、、、、、、、、、、、、、、
お前ら二人とも唯の人間じゃねーか、魔人相手できる戦力なんか端っからねーのに無茶するんじゃねー。
常識で考えろJK(じょしこうせー)』

ハイ、無理筋とは重々承知しておりますが、そこをなんとかお願いします、女王さま。 by四囲美
常識で考えろとか貴方に云われたくないですJK。by英子


=====QUEST発生===============================

『生徒会特別役員どもと接触し、廃部回避のためのサインをGETせよ』

=======================QUEST発生=============

                          (『英子と四囲美の人間革命R』・つづく)






最終更新:2014年08月09日 13:49