(30)269 『唯、蒼空を希う(ただ、そうくうをこいねがう)(五言絶句)』



 春 ○  小 ●  住 ○  久 ●

 靄 ●  娃 ○  居 ○  遠 ●

 待 ●  依 ○  不 ●  如 ○

 空 ○  幻 ●  穏 ●  冥 ○

 乾 ◎  影 ●  安 ◎  闇 ●


<詩題> 唯希蒼空


<韻目> 「寒」韻


<中国語読み>

jiu(3) yuan(3) ru(2) ming(2) an(4)

zhu(4) ju(1) bu(4) wen(3) an(1)

xiao(3) wa(2) yi(1) huan(4) ying(3)

chun(1) ai(3) dai(4) kong(1) gan(1)  

※( )内数字は現代中国語の四声であるので 平仄とは必ずしも一致していません


<書き下し>

久遠(きゅうえん) 冥闇(めいあん)のごとく

住居 穏安ならず

小娃(しょうあい) 幻影に依り

春靄(しゅんあい) 空の乾くを待つ


<直訳>

永遠は暗闇のようであり、

住処は、穏やかで安んずる場所ではない。

一人の美しい少女は幻影に依存し、

春のもやは空が乾くのを待っている。


<意訳>

いつまでも続く孤独は底知れぬ闇のようで、

心安らぐ居場所などどこにもなかった。

それ故、久住小春は自身の作る幻に縋り、いつしか自らの本当の姿さえも偽って虚像化し 強がっていた。

だが、実体がなく儚いその春霞のような存在は、本当は心の中に降る雨が止み そこに蒼空が広がる日を誰よりも切望している。



最終更新:2014年01月17日 18:06