(30)516 『おにんぎょさん』



「ヒィ-ッ、誰か!!助けてくれぇ!!」

私のかわいいお人形さん。
もう、そんなに逃げ回らないでよ。

「おにんぎょさん♪ おっにんぎょっさん♪
 わ・た・し・の・か・わ・い・い・お・に・ん・ぎょ・さ・ん・は・ど・こ・か・し・ら♪」

もういじわるなんだから。
ここは広くて探すのが大変なんだよね。
かくれんぼみたいで楽しいんだけどさ。

「ここかな~?」

ある部屋の扉を開けたが…いない。

「いないなあ。 どこだろう?」

部屋の外に出たら、何かが視界の隅っこを横切った。
追っかけて回廊に出たら、柱の影にうずくまるお人形がいた。

「おにんぎょさん、見っけ~!!」
「ぎゃあぁぁっ!!」


おにんぎょさんったら私を見たとたん、走って逃げ出しちゃった。
失礼しちゃう。何か傷つくなあ。まるで私が悪い魔法使いのお婆さんみたいじゃない、プンプン。
……あれれれ。おにんぎょさんったら、よりによってあの部屋に入っちゃった。
他にも隠れられる部屋はたくさんあるのにね。
私の大事なコレクションがたっくさん飾ってある部屋なんかに。

「…な、なんだ……コレは……」

ひょこり。
開いてるドアから中を覗いたら、お人形さんは部屋の中で呆然と立ち尽くしていた。
うふっ。 
面白いくらいに顔が引き攣っちゃってる。
まぁ驚くのも無理は無いかな。 たっくさんいるからね。
瞳の色、肌の色、髪の色、性別。
バラエティに富んだ私のコレクション。
みんな氷で守ってあげてるんだ。
壊れないように。


「どーお、素敵でしょ、わたしのコレクション」
「ひ、ひぃっ!! お助けを~」

「どのおにんぎょさんもまるで生きてるみたいでしょ。 わたしが永遠をあげたんだ。
 老いからも、病魔からも、悩みからも解放されて永遠の時を生きるんだ。 
 これからあなたにも永遠をあげるね。 そしてずーーーーっと私の傍に置いてあげるね」
「やめてくれーっ!!」

「北海に住む竜王よ、汝の氷冠をこの者に授けよ
 黄泉の国に住む死の女神よ、汝の吐息でこの者を凍り尽くせ
 発動 アイスレクイエム!!」

空気さえ凍らす超低温
体中を氷で固められたお人形さんは動きを止め、呼吸を止め、鼓動も止まり、永遠を手に入れた。

ふぅーっ、いっちょうあがり。
これを飾るのはまた明日にしようっかな。

ずらりと並ぶコレクションを改めて眺めてみる。
いくら見ても飽きないよねえ。
何体あってもいいな。
よしっ、今日はもう一体つくろっ!!

あ、ねぇねぇ、そこの素敵なあなた。
さっきからずっとわたしのことを見てたあなただよ。
あなた、いいお人形になりそうね。
そうだ。次のお人形は貴方にしてあげる。 嬉しい?
ふふっ。大丈夫だよ、全然痛くないから。
痛みを感じる前に気が遠くなるからさ。
だからさ、わたしのお人形さんになってよね。 うふふ。
逃げても無駄だよ。
ねえ、>>509さん…




509:名無し募集中。。。:2009/07/20(月) 17:17:35.87 0

>>507
ミティ様の語り口は確かにあの偽神様の話を思い出させますね
冷酷非情に圧倒的な強さを見せつけるミティ様ではなく「熱い」ミティ様が新鮮でした
随分痛めつけられてるにも関わらず心底「強い」と思わされました
あと一瞬まさかのアヤミキバトルかと思わせられましたw
タイトルがまたいいですね
ミティ様になら抱きつかれて噛みつかれて凍らされてもいいなあ……


最終更新:2014年01月17日 18:29