(30)584 『日食の街で』



「世紀の天体ショーがいよいよ始まろうとしています」

TVの画面では何がそんなに嬉しいのかレポーターがはしゃいでる。
彼の手には晴天を願った特大のてるてるぼうず。
重量と紙の強度が折り合ってないのか、頭がだらんと下がってる。
まるで絞首刑みたい。
誰かの幸福は誰かの不幸の上に成り立っているってこと?
それがあなたの解答なの。
それとも人は生まれながらにして、与えられた運命に隷属するしかないとでも?
ふんっ、精々はしゃいでな!
もうすぐあんたの、あんた達の縋っている人生の定理ってやつをひっくり返してやるからさ。

「ドクターマルシェ! 奴らが、リゾナンターがやってきました」

何をそんなに慌てているのさ。
それは来るさ。
だって私が招待したんだから。
広大な廃工場の一角から潜入を果たしたようだ。
無駄のない動き。
密集と散開のフォーメーションを切り替え、索敵を行いながら潜行を続けている。
リーダーから最年少まで、その表情はプロそのもの。
彼女たちが共に過ごしてきた時間の重さを物語っていた。

愛ちゃんはまだ飽きずに正義の味方をやってるんだね、偉いね。
私はちょっと疲れちゃったかな。
だから遊ぼうよ、あの頃みたいに。
愛ちゃん達が勝てば、ダークネスに関して、私の知り得た情報を全て渡すからさ。
でも、もし私が勝てば、この世界を…太陽が照らすことは二度と無い。
だから、精々頑張ってね。
私の作ったオモチャ達は完璧だから。


最終更新:2014年01月17日 18:32