――――AM 7:46 正門前
亀井絵里は大人なんです。
遊園地に来たくらいで、はしゃいだりしないんです。
だから小春みたいに突然歌い出したりはしないし、
ジュンジュンリンリンみたいに「プリティ!」「セクシー!」とかいって跳び回ったりもしない。
もちろんガキさんみたいに得意げにオススメコースを語ったりすることも、
その話に目をキラッキラッさせて聞き入ることもしません、れいなじゃあるまいし。
絵里は愛ちゃんみたく落ち着いて・・・あ、ダメだ。あの人、なんか一人でアヒャアヒャ言ってる。
とにかく、絵里は大人なんですハタチなんです成人女性なんです!
別に、最前列を見に行ったさゆとみっつぃーについていけばよかったとか思ってるわけじゃないの!
か、勘違いしないでよね!話し相手がいなくて寂しくなっちゃったとかじゃないんだからね!
- とまあ、一人空しくツンデレってる間にさゆとみっつぃーが戻ってきたわけですよ。
でも、なんだろう。
さっきより二人の表情に元気がなくなっている気がする。
「みんな、聞いて聞いて。今さゆみたち最前のほう見て来たらね、入り口の所に貼り紙がしてあったの!」
「なんやろと思ってよく見たら、『本日、動物園臨時休園』ですって!」
みっつぃーがしゃべり切るかどうかのタイミングで、え~っていう甲高い声があがった。
「え~っ!え~っ!なんで臨時休園なんですか!?小春すっごく楽しみにしてたのに!」
「私もデスよ!ここで金髪豚野郎が見れるてテレビで聞いて楽しみだっタのに」
「わかったから小春はもうちょっと声のトーン落とす。そんなことよりリンリン。あんた
普段どんなテレビみてんの」
「あ。あーしもみたよその番組。DVDに録ってあるから今度ガキさんにも貸すわ」
「いや、別にみたくて言ったわけじゃないから」
「返すんはいつでもえーから見終わったら感想教えてな」
「聞けよ!」
富士京DEZUNIE動物公園は、大きく遊園地エリアと動物園エリアの二つに分けられる。
圧倒的に人気で有名なのは遊園地エリアだけど、動物園エリアも休日の家族連れなどで
賑わっているって話だ。
それに、他じゃめったに見られない貴重な動物もいるらしい。
例えば、ホワイトタイガー。
「タイガータイガー・・・小春のホワイトタイガー・・・・・・」
小春が恨めしそうに何度も何度も呟いているのがそれだ。
うーん、ちょっとかわいそうになってきた。
「ホワイトホワイト・・・ホワイトタイガー・・・・・・」
「久住サン元気出して。ジュンジュンかわりにパンダみセてあげるカラ」
「別にいい。パンダは見飽きた!小春はホワイトタイガーがみたいのー!」
「ハア!?タイガーなんてタダのふとったねこじゃん!パンダのほうがすゴいし!」
「タイガーじゃないよホワイトタイガーだよ!パンダよりずぅ~~っとえらいんだから!」
「じゃア、パンダはずぅ~っとずぅ~~っと、えらくてすゴいもん!」
うーん、ちょっとどうでもよくなってきた。
とはいえ、この状況を放置するのはよろしくないと思う。
年長の愛ちゃんとガキさんはまだ漫才してるし、ジュンジュンは小春とバトル始めちゃったことだし。
ここは大人の女、亀井絵里がなんとかしなくては。
よしっ。
「絵里・・・何企んどーと?」
れいなが不安そうに絵里の顔を覗き込む。
そんな顔しなくてもいいのになあ。
絵里は、平和的な解決策を思いついただけなんだから。
「はいはいみなさん。ちゅーも-く」
手を叩いて、みんなの意識をこっちに向けさせる。
おっ。なんか今リーダーっぽくなかった?
「ここで、みなさんに提案があります」
最終更新:2014年01月17日 18:47