(32)355 『BLUE PROMISES 番外編 -Key holder-』



「あ、ガキさんええとこに来た」
「ん?」

リゾナントのドアをくぐったあたしを見つけるなり、愛ちゃんがカウンターから飛び出してくる。
そんな彼女のポケットから出てきたのは、それぞれ「A」と「R」の文字をかたどったキーホルダー。
しかも、色までちゃんと黄色と緑で、愛ちゃんとあたしを示しているのは明らかだった。

「あのな、常連のお客さんが作ってくれたらしくって」
「これを?」
「うん。なんであーしとガキさんの分だけなのかわからんけど…」
「え? 他の子の分はないの?」
「その人は『愛ちゃんとガキさんに』ってくれたんや」

愛ちゃんはあたしの手の中に、Rのキーホルダーをぽとりと落とす。
ちょっと小振りで、どこに着けていてもおかしくなさそう。

「大事にしますって、もしそのお客さんが来たら伝えてね」

手のひらの中で感じる愛情。きっと、作り手の想い。そしてあたしと愛ちゃんの絆。
こんなにもあったかくて、心が震える。ずっとずっと、大事にしたい。

「愛ちゃん、お守りはもうボロボロだからこっちに付け替えたら?」
「あ、あのお守りはどんなにボロボロになったって一生身体から離さん!
 あーしとガキさんをつないだ、大切な大切な、だっ、大事な…」
「冗談冗談。大事にしてくれて、ホント嬉しく思ってるから。ね?」

ちょっとからかってみただけなのに、顔を真っ赤にして本気で怒り出すんだもん。
うん、あたしも冗談にしては悪いこと言ったかなって思う。
でも、愛ちゃんの本気をこんなとこでも感じることができた。そんなことですら、嬉しい。

なだめるようにして愛ちゃんの肩をぽんぽんと叩く。その手の中には、大切なAの文字を忍ばせて。



最終更新:2014年01月17日 18:59