(40)422 タイトルなし(「光」に向かう9つの魂)



「そろそろかな・・・」

そう呟いて私は扉を開ける

カランカラン

懐かしい音とともに目の前に広がる風景

「変わらんなぁ」

あれから何年経つだろう

埃まみれではあるが、当時のまま残っていた

営業もしていない

誰も住んでいない

での、この喫茶店はキセキ的に残っていた

もちろん私は知っていた

「この日」にこの喫茶店がの残っていることを・・・



カウンターの席の埃をはらい、腰をかける

自然と目に浮かぶ


目の前にはカップを拭いている高橋さんの姿が・・・

隣ではその高橋さんと話しながらコーヒーを飲んでいる新垣さん

ウエイトレス姿で店内を走り回っている田中さん

楽しそうに話をしている亀井さん、道重さん

ジュンジュンと久住さんは相変わらず喧嘩してて、それを見ているリンリン


こんな日がいつまでも続けばいいと思っていたなぁ

懐かしいけど、すごく寂しいけど、涙は出てこない

最後の1人になってから泣くことはやめた

涙が枯れるまで泣いたせいかもしれないけど・・・

泣いてる暇なんかなかったせいかもしれないけど、もうずっと泣いていない

私は時間が経つのも忘れ、誰もいない喫茶店を眺めている

それだけなのに、不思議と飽きない、顔も自然とニヤけている


ここにきて何時間経つだろう

瞼が重くなってきた

ふと時計を見ると・・・

やっぱり

もう時間だ

埃まみれのカウンターに肘をつき、伏せて、瞳をとじる

あれ?

ここはどこ?

あれ?

体が軽い?

あれ?

この服装は・・・

あのころのわたし・・・

そうか、これは夢の世界だ


「みっつぃー、こっちだよ」

ふと呼ばれた方を見ると

「久住さん!それにみんな!」

あのころのみんながいる

「愛佳、早くおいで!みんな待ってるざ」

高橋さんが手をひろげて呼びかける

私は高橋さんのもとまで走り、おもいっきり抱きついた

あったかい・・・

久々に人のぬくもりにふれたような気がした

顔をあげると、みんなで私をかこんで、みんな優しい目で私を見ている

「みなさん聞いてくださいよ!愛佳、話したいこといーーーーっぱいあるんです!」

話たいことはいっぱいある

ありすぎて何から話せばいいかわからない


「愛佳!」

なにから話そうか、頭の整理がつかないでいる私に高橋さんが声をかけた

「全部、知ってるよ!」

「愛ちゃんとれいなと3人でずっと見てたよ」

「つらい想いさせたっちゃね、愛佳」

「絵里も途中から見てたもん!」

「さゆみもずっと見てたの」

「みっつぃー、一人にしてごめんね」

「光井サン、凄かったヨ!」

「光井サン、カッコヨカッタデス!」

高橋さんが私の胸あたりをポンポンとして

「私たちはずっとそこにいたんだよ」

私は再び高橋さんの胸に抱きこまれる

顔をうずめる瞬間に見えた高橋さんの目が涙ぐんでるのがわかった

「愛佳・・・大変だったね」


――ドクン――

かすれたような声でそう言われた瞬間、胸が高鳴った

同時に目頭があつくなる


久しぶりだなぁ

この感じ・・・

「愛佳、よくがんばった!」

「みっつぃー、ホントによくがんばった!」

私の頭をなでながら褒めてくれるみんなの顔が目に浮かぶ

出てきた涙がとまらない

いや

とめる必要はないか

きっとこの日のためにとっておいた涙なんだよ


おもいっきり泣き終えて顔をあげると高橋さんは前に見える「光」を指さして言った

「じゃあ、9人揃ったし、行こうか!」

私はこっちの世界でも9人目なんだね

私たち9人は「光」に向かって歩きだした

もう誰も欠けることはない

ずっと9人でいられる

そんな気がする



最終更新:2014年01月19日 23:14