先日の夢が、頭の中にこびり付いて離れない。
忘れたいと思っても忘れられない
鮮明に思い出そうとすれば気になって仕方が無くなる
どうして泣いているの?
ねえ、なんでそんなに、つらそうにしてるの?
聞いたって答えは返ってこない
だって貴女は、夢の中にいたから…
**
「あーうーいー」
「…絵里がとうとう壊れたの」
「とっくに壊れてるんやなかと?」
「ひーどーいー」
「だってそうやろ?頭が」
喫茶リゾナントでの日常は、亀井絵里にとってはとても大切であり、仲間たちにとっても当然大切なものである。
バカにされてるかもしれないような言葉でも、絵里にとってそれは大切な会話であった。
「だって変なんだもん、絵里が」
「だーかーらー」
「違うって言っても最初から変やから大丈夫」
けれど、少しだけ自重してほしい気もするけれど。
「…あ、そういえばガキさんは?」
「あ、絵里が戻った」
「もうっ、最初から絵里はまともですぅー」
「ガキさんは今日来れんって」
「え、絵里シカトですか?」
シカトされたよ、シカト。
俗に言うスルーだよ、スルー。
「愛ちゃんがさっきメールもらったって言ってた」
「そうなんだー…今日はもう集まらないかもね」
「そうやねー」
絵里をのけ者にして勝手に話が進んでますけども。
話を整理すると、ガキさんは今日来れないらしいです。
ちなみに店内には絵里とさゆとれーなしかいないし、愛ちゃんは二階でお昼寝中。
あ、今日はお店は定休日なんですよ。
「少ないと、なんか寂しいね」
「そうやねー…」
「………っあ!」
「いきなりなんね?」
「っビックリしたぁ…いきなり何?絵里」
「実は、昨日変な夢見たんだけど…」
「どんな夢?」
昨日見た夢をさゆみとれいなに話す。
鮮明に覚えているところは詳しく、おぼろげな所は適当に。
その夢に対する感想まで、絵里は話した。
「…ガキさんがねー…」
「ただの夢やなかと?」
「うーん、でもぉ…」
「ただの夢じゃなかったら、絵里は何だと思うの?」
「うーん……正夢、とか?」
「それなら愛ちゃんが今頃共鳴してるんじゃないかな?」
「そうやね、今頃みんなでガキさんのこと必死に探してるよ」
「うーん……」
「そんなに深く考え込まなくてもいいんじゃない?」
けれど、なぜか頭にひっかかるその夢は、とてもじゃないけど忘れられそうにはなかった。
考えても考えても答えは出ないのに、時間があればなぜか考え込んでしまう。
それは、その夢の中に答えがあるかもと期待させられているかのように。
「寝すぎてボケてるんやろ」
「ひどーい、れーなっ」
「たぶんそうだよ」
「あ、さゆもぉー」
結局バカにされて終わった。
つくづく適当な扱いをされて終わるのかと、絵里は少しだけ悲しんでみた。
それから時間が少し経って、階段から人が降りてくる気配を感じた。
目を向ければそこには愛がおり、目を細めながら現れた。
「おはよっ、愛ちゃん」
「おはよぉ」
「おはようございまーすっ」
「おぉ、おはよーって昼寝やったし…って、絵里やんか」
「はぁーい、お久しぶりでーすっ」
「久しぶりって3日間だけやんか」
「でも久しぶりなんですよぉ」
「そうやねっ」
愛は絵里に微笑みながらキッチンの方へと歩いた。
そしてコップを出したりして用意をしている愛を見て、れいなは自分も手伝うとキッチンの方へと行く。
しばらくして愛特製の温かいココアが出てきた。ありがとうと伝え、ココアが入ったコップに口を付ける。
甘い味が口の中に広がり、ほんわかな気分になる。
ココアに温められながら、絵里たち四人は他愛も無い話をしながら過ごす。
何気ない会話、何気ない日常。
絵里はそんな中で、いつのまにか昨日見た夢のことを忘れていた。
最終更新:2014年01月17日 15:50