そうやって貴女は誰にも心の内を見せないで
仲間がたくさんいる中で隠していたことはつらかったはず
ねえ、なんで一人でいるの?
一人じゃないよ、みんながいるから
抱え込まないで、話してよ、仲間でしょ?
雨の中で佇む貴女は、いつか夢で見た光景と重なっていた――――
◇◇
面白おかしく会話をしながら過ごしていたら、時間はもうすでに五時を指していた。
小一時間前に電気を付けに行ったのは、急に店内が暗くなったから。
というのも、大雨ではないがけっこうな量で降っていたからだ。
「もう5時か」
「早いねー」
「愛ちゃんっ」
「ん?」
「今度はあったかいミルクをちょうだいっ」
「ははっ、分かったやよー」
愛ちゃんは甘いんだから、とさゆみが言うが気にせずに愛は温かい牛乳を絵里の為に作ってくれた。
先ほどのココアが無くなり、まだまだ温かい飲み物が欲しいと思っていたから愛ちゃんに感謝する。
「ありがとございまーす」
「どういたしまして」
今度はホットミルクに口を付ける。
ココアとは違う、牛乳本来の甘さが広がっておいしすぎる。
やっぱり、ほんわかな気分になる。
と、そんな気分になった直後、突如として頭に浮かぶのは夢のこと。
そういえば、と思いながら絵里は先ほどれいなとさゆみに話した同じことを愛に話した。
「…へー、そんな夢見たんかー」
「どう思いますか?」
「うーん、でも、ガキさんがそうなってるような感じはしんけどね」
「やっぱそうですか…」
「絵里、諦めたら?ただの夢だよ」
「やないと、ガキさんに失礼やなかと?」
「うーん…でも、なぁー…」
絵里は唸り、思い、考え込む。
どうしても引っかかってしまう、他人からしてみれば所詮夢、しかし、されど夢なのだ。
なぜか絵里はこの夢がいつか現実に現れそうな予感がしてならない。
「そんなに絵里は気になるんか?」
「はい…なぜか、なんですけどね…」
「…絵里は、どう思うん?」
「絵里、ですか?絵里は、…いつか現実に出てきそうな気がしちゃって」
けれど確信は無くて、予感がするだけで可能性は絶対に100%ではない。
ただ、どうしようもなく気になってしまうだけである。
「…だって、ガキさん、すごく苦しそうだったんです。
泣きたくても大声で泣けない感じで、なんで一人でいるんだろうかとか起きても考えちゃって」
そんな時だった。
微かな声がその場にいたみんなの頭の中を走り抜けていく。
お互いに顔を合わせ、誰だったのか瞬時に考える。
「…ガキ、さん…?」
「…ガキさんや…ガキさんや…!!」
いきなり店を出ていった愛を追いかけるように、絵里、さゆみ、れいなも後に続く。
どこにいるのかなど口には出さず、声がした方へと走っていく。
愛は他の3人よりもより強く感じたせいか、足取りは迷うことなく向かっていた。
「…っガキさん!!」
叫んだ先には、彼女-新垣里沙-がいた。
だが、彼女は人気の無い公園で、雨が降る中、倒れていた。
最終更新:2014年01月17日 15:55