(28)233 『闘え!リゾナンター』



「ここのところ、リゾナントシティの活動が何故か停滞している。よってその原因を探るのが今回の任務だ。頼んだぞリゾナンター諸君!」

「「「「「「「「「ラジャー!」」」」」」」」」

語尾は「やよ」やら「なの」やら「っちゃ」やら「デ~ス」やらバラバラであったが、ともかく9人は敬礼の後、揃って基地を飛び出した。


「リーダー、ここは分かれて探索した方が効率がいいんじゃない?」
街に着くや否や、サブリーダーの里沙が提案する。

「ほやのー。里沙ちゃんがそれがいい思うんやったらそうするわー」
リーダーの愛がのんびりと答える。

「じゃあれいなこっち行くけん。誰が一緒に行くと?」
れいなが意気揚々と一方を指差し、仲間を募る。
だが、その声に応えるものはおらず、れいなは淋しげにに手を下ろした。

「絵里はさゆと一緒がいい~えへへ」
「さゆみも絵里と一緒がいい~うふふ」
れいななど目に入らないかのように、絵里とさゆみは仲睦まじげに向かい合って手を繋いでイチャイチャとしている。

「それデ、結局ドウ分かレルのデスか?」
「ワタシ、クッスミサント一緒ダケハ絶ッッ対イヤダ!」
「そんなのこっちの台詞だよ!小春だってジュンジュンと組むなんて絶対嫌だから!」
小春とジュンジュンがいつものように不毛な言い合いを始め、リンリンはそれをニコニコと見守っている。

里沙がいつものように「いい加減にしなさーい!」と割って入ろうとしたとき、愛佳がやんわりと口を挟んだ。

「お取り込み中のとこすんませんけど、分かれる必要はなさそうですよー」

どういうことだ?と首を傾げた全員の視線が愛佳に集まった。


「こういうことです」
そう言いながら愛佳が指差す方向に、全員の視線が移動したそのとき。

「キャハハハハ!やはり来たなリゾナンター!」
けたたましい笑い声とともに現れたのは、黒いボディスーツに身を包んだ戦闘員たちを引き連れた、いかにも生意気そうなちっちゃい女だった。

「やはりダークネスの仕業!だけど私たちが来たからにはもう好きにさせない!」
「おー、里沙ちゃん相変わらずかっこえーのー。惚れ惚れするわー」
「ちょ、愛ちゃん!そ、そんなことより早く仕切ってよ!リーダーなんだから!」
「あひゃ、また怒られたやよー。でも怒った里沙ちゃんもええのー」
顔を赤らめながらも言い募る里沙の熱意も空しく、愛は嬉しそうな笑顔を返す。

「キャハハハハ!言っとくけどオイラは今までお前らが倒した雑魚とはワケが違うよ。何しろ(ほぼ)オリメンだからな!」
「なんやねんオリメンとか…。っていうか(ほぼ)ってなんやねん」
ボソリとツッコんだ愛佳を睨みつけ、ちっちゃい女は必死に喚く。

「オイラの能力は『能力の阻害』だかんな!もう未来も見えないだろキャハハ!」
「あ、ほんまや。真っ暗ですわ」
「キャハハ!どうだ!能力を封じられたお前たちにもう勝ち目はない!」
得意げに見得を切るちっちゃい女であったが、話を聞いているのはその実愛佳だけであった。
少しだけ気の毒そうな顔をした後、愛佳はいまだケンカを続けている小春とジュンジュン、そしてそれを見守るリンリンに声をかける。

「先輩方は忙しいみたいやし、いったん休戦してナハッキであの女やってしまわへん?」
イチャつくのに忙しい愛と里沙、絵里とさゆみ、そして一層落ち込むのに忙しいれいなを見遣り、3人は頷いた。

「あんなやつ小春一人でも楽勝だけどね」
「クッスミサン一人ニナンテ絶ッッ対任セラレナイ!」
「まァまァ、仲良くやるデスよ」
「お、お前ら人の話聞いてんのか!?勝ち目ないって言ってんだろ!能力封じられてんだぞ!?予知も何もできないんだぞ!?」
いたくプライドを傷つけられたらしいちっちゃい女がヒステリックに叫ぶ。


「ああ、さっきの未来が真っ暗いう話ですか?あんたの未来が真っ暗や言うたんですよ愛佳は」
「な……ふざけんなっ!真っ暗なのはお前らの未来だよ!くたばれ!!!」
ブチ切れたちっちゃい女は、腰を落として人差し指と親指を胸辺りに持ってくる妙なポーズをとったかと思うと声を限りに叫んだ。

「セクシービーム(ビームビームビーム……)!!!」(エコー付)

眩いビームが4人に向かって伸びる!ちゅどぉぉぉぉん!!!!

「キャハハハ!どうだっ!オイラの必殺セクシービームの威力を見たか……って…えええっ!?」
ちっちゃい女は目を疑った。

「何で…!?何で効かないんだよ!そんなはずないだろ!?そこは効くだろ普通!倒れるだろ常識的に考えて!」
平然と立っている4人に対し、ちっちゃい女は理不尽な文句をぶつける。
しかし、返ってきたのはなお理不尽な小春の言葉だった。

「あんたみたいなちんちくりんのセクシービームとか効くわけないじゃん。どこがセクシーなの?」
「お、お、お前みたいなオッパイもロクにないヤツにだけは言われたくない!」
小馬鹿にしたような小春の言葉に対し、思わずちっちゃい女は言い返す。

「……!!何てことを…!!いくらダークネスでも言うてええことと悪いことがあるやろ!」
「非道デス!それハあまりニモ残酷デス!久住さんハ…久住さんハ……ウゥ…」
「ソウダ!人ガ気ニシテイル欠点ヲ……!謝レ!今スグクッスミニ謝レ!」
「あの、ちょっと、小春は別にそこまで気にして……ねえそこまでなの?小春の胸ってそんなにアレなの?そうなの?そうなんだ……」
消沈する小春の肩に3人の手が置かれる。

「オイ、オ前!絶対に許サナイ!ワタシオ前ノコト絶ッッ対に許サナイ!クッスミノ仇ダ!」
燃えるような目でちっちゃい女を睨みつけ、ジュンジュンは涙を流す。

「あ、ありがとうジュンジュン。でも小春別に死んでないんだけど…」
そんな2人の様子を見守る愛佳とリンリンの目にもまた、涙が浮かんでいるのであった。


「あーもうゴチャゴチャうっさい!おい、お前らいけ!」
苛立つちっちゃい女の号令に従い、戦闘員たちが襲い掛かる。

「ワタシガ本物ノセクシーヲトクト見セテヤル!」
溢れる涙をそのままに、ジュンジュンは戦闘員の只中に飛び込んでいった。

「ハイヤァ!セクシーパンチ!セクシーパンチ!セクシーーーーパァンチ!!」
「おおゥ!ジュンジュンすっごクセクシーデス!」
「ホワチャァ!!セクシーキック!セクシーキック!セクシィィキィィーーーーック!!」
「…めっちゃ普通にぶん殴ったり蹴り飛ばしたりしてるだけじゃん」
「シィ!久住さん!空気読んでくださいよ!」

…そうこうするうちに、戦闘員たちはジュンジュン1人の手であっという間にぶちのめされる。
そしてジュンジュンの瞳は鋭くちっちゃい女に向けられた。

「ヒッ…」
思わずたじろぐちっちゃい女に対し、ジュンジュンは問いかける。

「ワタシノ魅力何カオ分カリ?大キナ声デ…SAY!」
「……えっ?えっ?」
「SAY!!」
「セセセクシー?セクシー!!」
「ウム、正直ッテ良イモノヨ」
慌てて答えるちっちゃい女に、ジュンジュンは満足げに頷いた。

「って結局自分自分じゃん。小春の仇はどうなったの?」
憮然と呟く小春の内心などどこ吹く風で、ジュンジュンは3人を振り返り親指を立てるのであった。
リンリンはその様子をニコニコと見守るのであった。

「あ。逃げる気やであの人」
そして、このすきにコッソリ逃げ出そうとしていたちっちゃい女を、愛佳は冷静かつ無慈悲な言葉で絶望に突き落とすのだった。


「に、逃げるんじゃねーよ!いったん出直すだけだっつーの!」
「コノ卑怯者メ!絶ッッ対許サンワァ!」
この期に及んで負け惜しむちっちゃい女に対し、ジュンジュンの怒りが爆発する。

「クラエィ!セクシーパンチィャァ!!」
迫力の、そして究極の全力ダッシュで一瞬にしてちっちゃい女の前に立ったジュンジュンは、恐怖に歪むその横っ面を殴り飛ばした。

「へぶっっ!」
容易く空中をグルグルと舞いながら吹き飛ぶちっちゃい女を、ジュンジュンは容赦なく追撃する。

「セクシーパンチ!セクシーキック!セクシーパンチ!セクシーパンチ!セクシー……」

やがて、綿帽子のように舞い続けたちっちゃい女は、頭の上にエンジェルを舞わせながら地面に横たわった。

「ク、クソ…リゾナンターめ…。だけどオイラを倒したからっていい気になるなよ!ダークネスには裕ちゃんたちオリメンやごっちんがまだ…」
「みんな!今なの!喰らってくたばれ!必殺……!」
「……へ?」
ボロ雑巾のようになりながらも、お決まりの最後の捨て台詞を残そうとしたちっちゃい女は、そこで信じられない光景を目にした。

「ちょ、ちょ待て!今から必殺?見て!もうやられてるから!オイラもう完全に戦闘不能だから!ただのパンチとキックで瀕死だから!待て…待てって!」

「へぇぇるみぃぃぃぃぃ!!!!」
「あああぁぁぁっっっ!!!!」

ちゅどーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!

「厳しい……戦いだったの。でもかわいいさゆはいつも最後には必ず勝つの」
さゆみは淋しげな表情で…そしてそんな表情を浮かべる自分に満足している瞳の色を湛えてそう呟いた。

こうして今回もさゆみのいいとこどりにより、戦いは終わったのであった。
そして、明日を守るため、リゾナンターたちは今日も胸の高鳴る方へゆくのであった。



最終更新:2014年01月17日 16:24