(29)232 『永遠の幸せ』



「さーて、生け捕りにした魔女にはどんなお仕置きがいいかな」

1万近い人間の思念を縒り合わせて作った結界に囚われ身動きが出来なくなったミティを見て、教祖は勝利を確信した。
が、次の瞬間愕然とした。
神殿前の広場に詰めかけた信者達、魔女を捕らえる為の結界を張るために召集された信者達が、老若男女を問わず身につけていた衣服を脱ぎ捨て、転げ回っている。

「き、貴様何をした」
「あたしは何もしちゃいない。 
あの連中はあたしの心に触って熱くなったんじゃないかな」
「何を馬鹿なことを」
「あたしの氷の心に触れたことによって体温が下がってしまった。
で、相対的に気温の方が体温を上回っちまったから、熱さを感じて服を脱ぎ捨てて新興宗教、露出教の誕生ってわけさ」
「きさま、我がしあわせ教を馬鹿にするのか」
「はっ、言いがかりは止しとくれ。 あたしが何もしなくてもあんたは最初っから馬鹿さ」
「何を」
「あんな普通の人間を使って私を止められると思ってたぐらいだからさ。
動けない振りをしたら、鼻の下を伸ばしやがってこのエロおやじが」

氷の鎌を手に魔女は教祖を睨みつけた。

「あんたに永遠の幸せをやるよ、感謝しな」

魔女の腕の一振りは赤い霧が呼び、霧はたちどころに凍った。



最終更新:2014年01月17日 16:43