「命と引き換えにして、やるべき事があなたにあるの?」
彼女はそっと眉をひそめて言った。
俺のやるべき事…
「それを知りたいんだ」
俺がそう言った時、彼女の唇が細かく震えているのが見えた。
「きっと後悔する事になるわ」
「後悔?一体何に?何も分からないまま、何も思い出せないまま生きていけって言うのかい?俺にだって守れるものがある筈だ!」
「あなたを危険にさらしたくないの」
「俺はどうなっちまうかなんて、そんな事どうだっていい!」
俺が声を荒げた瞬間、彼女の目の奥にぎらり、と何かが揺らめいた。
「今、何て言った?」
言葉に刃の鋭さがあった。…彼女の目にあるものは…怒り?
「“なっちなんてどうだっていい”って言ったわね…?あの人を馬鹿にするのは絶対に許さない」
いや、俺はそんな事…
―ぬぅん!
稲妻が俺の顎を貫いた。意識が吹っ飛ぶ瞬間に、それが彼女の拳だって事が分かった。
ちなみに記憶はまだ戻って無い。
最終更新:2014年01月17日 17:39