※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

それは、いつもと同じタンカー護衛任務のはずだった。もうすぐ抜錨。鏡を覗き込み、身だしなみを確認する。どうせ航海中に服も髪もよれよれになるに決まってるが、司令官の前では少しでも可愛くありたい。リボンの結びが左右不揃いなのに気付き、敷波は結び直した。1

昭南(シンガポール)から門司に向かう護送船団に連合艦隊から参加するのは敷波ただ一人。心細い。旗艦の平戸さんをはじめとする海防艦のみんなは信頼できる艦娘たちだ。だが、南シナ海を中央航路で北上してゆくにつれ、敷波の不安は高まっていった。2

(ああ、いけない! この船団は! この航路は!)どうして忘れていたのだろう。大事な船団護衛。大変な海上護衛戦。それは敷波にとって最後の……。その時! 海中から何者かが飛び出した! それは異形の艤装を振るい、一瞬で平戸たち海防艦を薙ぎ倒した! 3

あの時も私はグロウラーの接近に気付けなかった。そしてまた今回も……! だけど違う! まだ平戸さんたちは沈んでいない! 今度こそ暁の水平線に勝利を刻むんだ! 過去を乗り越えて! 敷波は謎の艦影を討つべく連装砲を構えた! 砲雷撃戦……始めるよっ! 4

その艦は、宿敵グロウラーではなく、深海棲艦ですらなかった。両腕に巨大な鋏状兵器を付けた異形の艤装。着用する水兵服の胸には『希望崎』の文字。そんな鎮守府は存在しない。「グロウラーかと思った? 残念、蟹ちゃんでしたァー! だが史実通り貴様はここで轟沈させてやるぜェー!」5

■たたかえ蟹ちゃんシリーズ■第5話☆タンカー通商破壊せよ!■


敷波の連装砲が火を噴く! 練度が高い! サイバネ腕を装備した謎の敵艦に次々と命中弾! だが!「ヒヒャヒャ! 旧海軍のカビ臭い砲撃なぞ最新サイバネ装甲には効かぬわーッ!」両腕でガードし無傷! 悠々と接近!「ふんっ! デカい腕が邪魔で足元が良く見えないんじゃない?」「はァ?」6

サイバネ艦は慌てて足元を見る。迫り来る五本の雷跡!「しまったァ! か、回避ッ! 駄目だ間に合わ」ズズーゥン! サイバネ改造されてない生身の本体に命中! 噴き上がる水柱! 中破してビリビリに破けるサイバネ艦の水兵服! なお体型は駆逐艦級だ! 7

だがサイバネ艦は怯まない! クロー後部のブースターを吹かして体勢を整え更に接近!「ここからは私の距離だぜェーッ! 真っ二つになって着底しなァーッ!」サイバネ巨大鋏による斬撃! 敷波は砲撃体勢を解除! 腕を引いて空手の構え!「接近戦ね……!」8

敷波の右上段蹴りがサイバネ鋏に炸裂し軌道を逸らす! 蹴り足を戻しながら踏み込み左連装砲正拳突き!「グワーッ!」たたらを踏むサイバネ艦!「ま、得意だからいいけどね!」敷波はサイバネ腕を掴み、関節可動範囲を越えて捻り上げる! 9

ブオオオーッ! 敷波の背部艤装煙突が激しく発煙! 出力全開! ボギィッ! サイバネ腕をへし折る!「アババーッ!」フィードバック痛に苦しむ敵艦!「糞ッ! 糞ォッ! ……ククク、ヒャハハハ! だが勝つのは私だァーッ!」敷波の腕の中で折り取った腕が光る! ズドーゥム! 遠隔起爆! 10

(ちくしょう……まじかよ……またあたしは……ここで沈むのかよ……)至近距離で起きた爆発を受け大破した敷波が、青い海の中へ沈んでゆく。(どうせ敷波の事なんか……みんなスグ忘れちゃうんだろうな……ま……別に……いいけどさ……)11

(………………………………………………………………………………よくない!)12

あいつだけは絶対道連れにしてやる。正体不明の敵艦を撃退した武勲艦として、みんなの記憶に残ってやる。沈みゆく敷波は必殺の酸素魚雷を構え、遥か頭上の海面に見える艦影を狙った。潜水艦角度からの五連無影雷撃! 避けられるなら避けてみろ! 13

「さァーァて、可愛いタンカーちゃんたち。じっくり通商破壊したげよォねェー」下劣な笑みを浮かべながらにじりよる隻腕サイバネ艦。ズドドドドドーン! そこに酸素魚雷が命中しクリティカル轟沈!(司令官……私……すごかった……でしょ……?)弾着を見届けると、敷波の意識は途絶えた。14

……。「曳航してくれた平戸さんたちに御礼を言うんですよ」「あれ? 綾波ちゃん? あれ……?」「ダメコンが間に合ったんですって」「……なんだよぉ、貴重なダメコンを私なんかに使ってさ……なんだよぉ」過去の影に打ち勝ち、またひとつ強くなった敷波。鎮守府を暖かな春の日が照らしていた。15

■第5話☆タンカー通商破壊せよ!■ おわり



参考リンク: