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■二〇禾予ほんとうのプロローグ・前編「パルプが蟹を視た」■


「そんなことないよ。パルプちゃんは十分メイン・ヒロインっぽいよ!」
最近知り合いになった二〇三七二三さんは、そう言ってくれた。
本当に、そうだろうか。

魔法王国マジカニアの第一王女、パルピューラ・マジカニア・レガリス。通称、パルプ。
一年間の人間界修行を終え、愛する人と結ばれ、順当にいけば次期女王となるはずである。
奇跡の真魔法『パルプ☆マジカニカ』の使い手であり、さらには“転校生”となって全てを見通す<未来視>を手に入れた。
カタログスペック的にはメイン・ヒロイン級と言っても差し支えないはずである。

だが、パルプが愛した少年はハーレムの主であった。
本命は<女王蜂>こと“鬼嫁”埴井葦菜。
対抗馬は“所有者”紫ノ宮緒子。
少なくともこの二人には、現状では明らかに遅れを取っている。
他にも恋敵は多く、パルプの席次はどれだけ甘く見積もっても5~6位だろう。

少年の愛を受ける、ただ一人の女性となるべくパルプは奮闘を続けているが、<未来視>に映るのはハーレムエンドばかりだ。
もしかしたら、自分はサンシタ・ヒロインなのではないだろうかと、パルプは思いはじめていた。

たわむれに。
ほんのたわむれに。
パルプは<未来視>を使って、もし自分が二家の一員となったらどうなるのかを視てみた。

パルプは、ありえない未来を視た。
その世界では、パルプは「二〇禾予」と名前を変え、両腕をサイバネ☆クローに置換してサンシタ全開で暴れていた。
王家の誇りも失い、頭脳指数も深刻に低下しているようだ。
恐るべし、サンシタ・イニシエイション。

「うわー、これはない。こんな未来もありうるなんて酷いなぁ」
パルプは使い魔のマリンモンキー、リミラヴと一緒に予知の内容を話し合った。
「アカン。このルートは絶対に選んだらアカンわー」
「そうだよねー」
「でも『蟹ちゃん』もこれはこれで結構かわいいやん?」
「えー、やだよう」
「一応、『蟹ちゃん』でもハーレムエンドは行けるらしいで。ハジメはんは心が広いなぁ」
「それだけが取り柄ですからね」
「“それだけ”は酷いやろ」
「ふふふ」
「あははは」

■「パルプが蟹を視た」■ おわり・後編に続く

■二〇禾予ほんとうのプロローグ・後編「パルプが闇を視た」■


未来を見通すパルプの目に映るのは、絶望ばかりだった。
繰り返される天変地異。蔓延する悪疫。地球全土を焼き尽くす核戦争。絶滅寸前の人類は、十束学園の魔人たちに支配され虐げられる。
……そんなことは、パルプにとって些細なことだった。
もとより人類滅亡は大魔法使いエリオーンが予言した「ありうる未来」にすぎず、それゆえマジカニアは地球から切り離された異世界に退避しているのだ。
たとえ地球が消滅しようとも、マジカニアは滅びない。

パルプの絶望は、世界でただ一人の愛する少年が死ぬことである。
希望崎学園で起きた、武器バーゲンセールによるハルマゲドンに巻き込まれ、一一は死亡する。
それが、未来を見通すパルプの目に映った暗黒の未来であった。

あらゆるルートを検討した。
金光不動を殺しても、希望崎学園を爆破消滅させても、ハルマゲドンの阻止こそできるものの彼の死だけは覆せなかった。
埴井葦菜の手を借りても、紫ノ宮緒子の手を借りても、“転校生”の誰の手を借りても、彼の死だけが不動の特異点であった。
あらゆる場面で『パルプ☆マジカニカ』を撃ってみるデバッグ作業じみたルート検証すら試してみた。

ハーレムエンドが嫌だなんて、私はなんて贅沢だったんだろう。
何だってする。どんな犠牲も厭わない。
彼の命が助かるのなら、私が死のうとマジカニアが滅びようと構わない。

最後に幸福な未来が視えたのはいつだったろう。
記憶を手繰り、パルプは「蟹ちゃん」に辿り着いた。
完全なるサンシタ・ヒロインに姿を変えて希望崎学園に介入することで、時の流れを擾乱する。
それが、パルプが見つけ出した、ハッピーエンドに至る唯一のルートだった。

王家の誇りを捨てるだけで彼の命が助かるのなら、それこそバーゲン(お買い得)そのものだ。
パルプの胸には、自分が自分でなくなることに対する不安はほとんどなかった。
愛する人のことを救える喜びに満ち溢れていた。

……そして、マジカニア第一王女、パルピューラ・マジカニア・レガリスは、二家の扉を叩いた。

■二〇禾予ほんとうのプロローグ■ おわり