嘆きの先にある光 あとがき

 

完結したリリウム編ついてたくさんの感想を頂き本当にありがとうございます。
書き手にとってはみなさんからの感想こそが一番の執筆のモチベーションであり、
今回もこれまでの苦労が報われた心地です。

ここでは、胸の内に溜まりこんだ繭期の成分を完全に払拭するため、
物語の裏話的なモノを書きたいと思います。
自己満足の蛇足な内容ですので、作者の作品語りが嫌いな人は華麗にスルーをお願いします。


・タイトルについて
すっかりリリウム編で定着していますし自分でも使っていますが、最初はタイトルに悩みました。
読んでいる途中で「これはリリウムとのコラボなのか!?」と驚かせたかったのもあって、
あまりリリウムを匂わせるタイトルは使えず、
結局バンシーの嘆きを浄化するというテーマから現タイトルに落ち着きました。
でもやっぱりリリウム編が一番明快でいいと思います。

・リリウム編のきっかけについて
魔法使いえりぽんの世界とリリウムの世界を繋ぎ合わせて何か書いてみたい、
という思いは以前よりありました。
以前1レスネタで書いた続かない予告編(14スレ 476)によって、
リリウムの書物の中に入り込むという構想だけは閃いていたものの、その後が繋がらず。

転機は、たまたま目にしたあるブログの文章によってでした。
それはリリウムパンフレットに記載のスノウの花言葉「あなたの死を望みます」から、
スノウが一体誰の死を望んでいるかという考察で、
その時ふと、スノウが死を望んでいる相手はリリーとファルスで、
しかもそれは2人の不死から解放するためだという妄想が頭に浮かんだのです。
(厳密にはその解釈だと時系列的に噛み合わないのですが)
そこに終盤の激烈な叫び、慟哭から閃いたバンシーの存在が結びつき、
(これも厳密に言えばスノウは叫んでいませんが)
そこから自分の頭の中で一気に物語が動き出しました。


・リリウム世界の表現方法について
本当はメンバー全員がリリウム世界で自由に動き回り物語を進めていければ最高なのでしょうが、
そこまで手を広げてまとめられるような力量はまったくないのですぐに諦めました。

一番書きたいテーマがバンシーと化したスノウの悲哀とその浄化だったため、
結局スノウに死を望まれた2人にリリウムの物語を基本そのままの形で体感してもらい、
その合間合間に2人の感想や必要な情報、ラストへの伏線などを織り込む形式にしました。
もっとリリウムの魅力を引き出す書き方もあったでしょうが、今の自分にはこれが限界でした。
ただ、ネタバレ抜きではスノウの悲哀は語れないため、完全ラストまでのネタバレの内容になったのは、
やむを得ないこととはいえもう少しどうにかならなかったのかと反省材料です。

・執筆タイミングについて
途中DVD発売後に書けばいいのにといった意見も頂きましたが、
自分の中では、リリウムの舞台を観劇後に胸の内に溜まりこんでいた妄想が熟成されてきた
このタイミングだからこそ書けた内容だと思っています。
これがDVD発売後だと、視覚から入ってくるリリウムの圧倒的なパワーと情報量に
妄想が負けてしまってうまく物語を書き進められない危険性がありました。
それに読み手としてもDVDで視たリリウムの進行とこの作品の間にある諸々の差異が、
あえて意識的にそうしている部分も含めて、粗としてわかりやすく目についてしまい、
集中して読めないのではないかという懸念もありました。

……というのがまあ、改めて考えた後付けの理由です(苦笑)
実際は思いついた勢いでDVD発売まで待つこともできず書き始めただけなのですが、
ただやはりDVD発売後だったら少なくとも同じ内容では書けなかったと思います。

ちなみにDVDでリリウムを再確認して、一番やってもうたと頭を抱えたのは、
スノウがマリーゴールドに刺されて倒れた後のシーンで、
実際は息を引き取るまでずっと目を閉じていたことです。
物語内では死の間際のスノウの瞳からバンシーだと気付くという演出が、
DVD発売後に書こうとすると全てボツになるところでした(苦笑)


・スノウの謎について
リリウムに残る謎はいくつもあります。
例えば「リリーがファルスにイニシアチブを取れた理由」など。
(正直よくわからなかったので今回は「怒りで能力が高まった」として逃げましたが)
その中でスノウの悲哀を書いた今作では、
「死ぬのが怖かったと言っていたスノウが、そのすぐ後にあえて自ら死を選んだ理由」
について自分なりの解釈を提示してみました。
みなさんがこの解釈についてどう感じたか、違和感なく読んでもらえたか特に気になるところです。

スノウのラストの真相告白シーンは、とにかく話が重くなって大変でした。
もう少し書きようがあるのではとも悩んだのですが、感想のコメントからは
その重さがスノウの悲哀の大きさとして伝わったようでホッとしています。
あと重さを越えて最後ハッピーエンドっぽく終わらせることができたことにも安堵しています。

・ケメコについて
ケメコはアンデッド繋がりで出せそうだと閃いて、つい勢いで登場させてしまいました。
生田の電話の下りでの反応から、出すのがバレバレかと覚悟していたのですが、
多くの皆さんに驚きかつ楽しんでもらえて本当によかったです。
ケメコの饒舌は、久々の活躍でテンションMAXな本人の様子を描写したものですが、
それ以上にケメコを書くのが楽しくて勢いが止まらなかったためでもあります。

また忘れた頃にどこかの話でひょっこりと登場されることもあるかもしれませんが、
その時はまた暖かく受け入れてもらえれば嬉しいです。


ケメコじゃありませんが、書き出したら止まらず長々と書き連ねてしまいました。
でもこれでようやく、自分の中でこのリリウムの物語に区切りをつけることができそうです。
改めて、これだけの長編をわざわざ読んで頂き、本当にありがとうございました。

 

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最終更新:2015年01月24日 21:28